公道に接する土地を所有する甲が、乙に対して右公道の拡幅のためにその所有地の一部を提供するよう働きかける一方、自らも所有地の一部を提供する等の負担をし、甲のこれらの行為の結果として、右公道全体が拡幅され、乙の右所有地も拡幅部分の一部として通行の用に供されるようになったなど判示の事実関係の下においては、乙の右所有地については、要役地の所有者である甲によって通路が開設されたものとして、通行地役権の時効取得が認められる。
要役地の所有者によって通路が開設されたとして通行地役権の時効取得が認められた事例
民法283条
判旨
通行地役権を時効取得するためには、要役地所有者によって承役地となるべき土地の上に通路が開設される必要がある。要役地所有者が承役地所有者に働きかけて土地を提供させ、自らも所有地を提供するなどして通路を拡幅した場合は、「通路の開設」が認められる。
問題の所在(論点)
通行地役権の時効取得の要件である「継続」を満たすための「通路の開設」について、要役地所有者が自ら物理的な工事を行うのではなく、承役地所有者に働きかけて土地を提供させ、自らも応分の負担をした場合に、通路の開設が認められるか。
規範
通行地役権が時効取得(民法283条)されるためには、「継続かつ表現」のものであることを要する。ここでいう「継続」の要件を満たすためには、単に通行の事実があるだけでは足りず、要役地の所有者によって承役地となる土地の上に「通路が開設」されたものであることを要する。
重要事実
1. 被上告人らは、各自の土地から公道へ出るため、上告人所有地(本件土地)に接する西側道路を通行していた。2. 被上告人らは、上告人に対し、道路拡幅のために本件土地を提供するよう強く働きかけ、上告人はこれに応じてフェンスを東側に引き込んで設置した。3. 被上告人ら自身も、各自の所有地の一部を提供し、費用を負担して共同で道路を拡幅した。4. その結果、本件土地を含む道路は幅員約3.6メートルに拡幅され、被上告人らは20年以上にわたり維持管理を行いながら通行を継続した。
あてはめ
被上告人らは、上告人に対して土地を提供するよう強く働きかける一方で、自らも所有地の一部を提供し費用を負担するなどの相応の負担をしている。これらの行為の結果として、西側道路全体が拡幅され、本件土地が通路の一部として供されるようになった。そうであれば、物理的な開設作業の一部を上告人が行ったとしても、実質的には被上告人ら(要役地所有者)によって通路が開設されたものと評価するのが相当である。
結論
被上告人らは通路開設後20年以上にわたり通行を継続しているため、本件土地について通行地役権を時効取得したといえる。
実務上の射程
「通路の開設」は不法占拠的な利用を排除し時効取得を厳格にする趣旨である。本判決は、要役地所有者が全ての工事を完遂せずとも、他者への働きかけや自己の負担により通路として機能させた場合には「開設」を認める柔軟な判断基準を示しており、実務上、開設の主体性を判断する重要な基準となる。
事件番号: 昭和31(オ)311 / 裁判年月日: 昭和33年2月14日 / 結論: 破棄差戻
民法第二八三条にいう「継続」の要件をみたすには、承役地たるべき土地の上に通路の開設があつただけでは足りず、その開設が要役地所有者によつてなされたことを要する。
事件番号: 平成9(オ)966 / 裁判年月日: 平成10年2月13日 / 結論: 棄却
通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとし…
事件番号: 平成23(受)1644 / 裁判年月日: 平成25年2月26日 / 結論: 破棄差戻
通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合において,最先順位の抵当権の設定時に,既に設定されている通行地役権に係る承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置,形状,構造等の物理的状況から客観的に明らかであり,かつ,上記抵当権の抵当権者がそのことを認識していたか又は認識するこ…