判旨
不動産の二重売買において、売主が第二の買主等へ移転登記を経た場合、原則として第一の買主に対する債務は履行不能となる。ただし、売主が権利を回復して移転できる特別の事情がある場合は例外であり、その主張立証責任は買主側が負う。
問題の所在(論点)
不動産の二重売買において、売主が第二の買主等に移転登記を経た場合、第一の買主に対する債務は履行不能となるか。また、履行が可能であるとする「特別の事情」の主張立証責任はどちらが負うか。
規範
不動産売買において、目的物が第三者に譲渡され、かつ移転登記が完了したときは、社会通念上、売主が当該第三者から権利を買い戻して買主に移転できる等の「特別の事情」がない限り、売主の買主に対する債務は履行不能に陥る。また、この特別の事情の主張立証責任は、債務の履行を求める買主側が負う。
重要事実
売主(被上告人)は、本件土地を第一の買主(上告人)に売り渡したが、その後、第二の買主(訴外E)に売り渡し、さらに訴外F社へと転売された。それぞれの売買において移転登記手続が完了している。第一の買主は、売主に対し売買契約に基づく債務の履行を求めて争った。
あてはめ
本件では、被上告人が訴外EおよびF社に対し順次売却し、移転登記も経ている。社会における一般の取引観念からみて、被上告人がF社から本件土地を買い戻して所有権を回復し、上告人に移転することが可能であるという「特別の事情」は認められない。上告人(買主)は、履行不能ではないと主張する根拠となる当該特別の事情を具体的に立証できていない。
結論
被上告人の上告人に対する本件土地の売買契約に基づく債務は履行不能の状態に立ち至ったといわざるを得ず、履行請求は認められない。
実務上の射程
二重譲渡における履行不能の成否および立証責任の所在を明確にしたリーディングケースである。答案上は、登記を具備した第三者の存在により、債務者の履行義務が「社会通念上不能」(民法412条の2第1項参照)となることを論じる際に引用する。例外(回復可能性)を主張する側の立証責任についても言及が必要である。
事件番号: 昭和30(オ)731 / 裁判年月日: 昭和32年6月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不存在の法人を当事者とした無効な契約が存在しても、後に改めて個人間で締結された別個の契約の効力は妨げられない。また、本人が無効な契約等の事実を知りながらこれを承認した場合には、追認により有効となる(旧民法95条参照)。 第1 事案の概要:Bは当初、D合資会社との間で契約(一)を締結したが、実際には…
事件番号: 昭和30(オ)720 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
不動産の二重売買の場合において、売主の一方の買主に対する債務は、特段の事情のないかぎり、他の買主に対する所有権移転登記が完了した時に履行不能になるものと解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)333 / 裁判年月日: 昭和36年9月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、後買主が登記を具備した場合、特段の事情がない限り、売主の前買主に対する登記移転義務は履行不能となる。また、中間省略登記がなされた場合であっても、それが実体上の権利関係に合致するものである限り、その有効性を否定することはできず、民法177条の対抗関係が維持される。 第1 事…
事件番号: 昭和22(オ)3 / 裁判年月日: 昭和23年2月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の売買において、売買契約の成立と同時に所有権が移転する物権的合意があったと認められる場合、代金の支払により直ちに所有権移転の効力が生じる。また、日常の交渉経緯や親族関係に照らし、契約の承諾に関連する代金受領の代理権が認められる場合には、その受領により契約は有効に成立する。 第1 事案の概要:…