判旨
市街地において、間口一間半、奥行一〇間という極めて狭小な空地であっても、独立した家屋の建築所有を目的とする賃貸借の対象となり得るとし、そのような土地の提供が信義則に反するとはいえない。
問題の所在(論点)
間口一間半(約2.7m)、奥行一〇間(約18.1m)という極めて狭小な土地について、独立家屋の建築所有を目的とする賃貸借の対象とすることが、信義則上許されるか。
規範
独立した家屋を建築し、これを所有することを目的とする土地の賃貸借においては、その土地が社会通念上、家屋の建築・所有に適した規模・形状を有しているか否かが問題となる。もっとも、市街地においては、狭小な土地であっても独立した家屋の建築・所有のために利用される実態があることから、一定の利用可能性が認められる限り、直ちに賃貸借の目的物として不適格であるとは解されない。
重要事実
上告人と被上告人の間で、判示15坪の空地(間口一間半、奥行一〇間)の提供が争点となった。上告人は、当該土地が極めて狭小であることを理由に、これを独立家屋の建築所有のために提供することは経験則や信義則に反すると主張した。
あてはめ
市街地においては、間口一間半、奥行一〇間という狭小な空地であっても、これを独立家屋建築所有のために賃貸借の目的とすることは明らかに行われている。本件の15坪の空地についても、原審が認定した事実関係のもとでは、家屋の建築・所有が不可能とはいえず、被上告人が上告人に対して当該土地を提供することは、信義則に違背するものとはいえない。
結論
本件土地の提供は信義則に反せず、当該土地を目的とする賃貸借の成立を肯定すべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…
土地賃貸借における目的物の適合性が争われる場面での指標となる。狭小地であっても市街地の実態に照らして利用可能性がある限り、公序良俗や信義則違反を理由に契約の有効性や義務履行の適法性を否定することは困難であることを示している。
事件番号: 昭和31(オ)627 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 棄却
土地改良法第八条第四項による書類の縦覧期間が法定の二〇日間に満たなくても、満一〇日間縦覧期間が存した以上、同法第一〇条第一項によつてした知事の土地改良区設立認可は当然無効ではない。
事件番号: 昭和32(オ)816 / 裁判年月日: 昭和34年7月17日 / 結論: 棄却
賃貸土地三一〇坪六合五勺のうち無断転貸された部分が三〇坪にすぎない場合でも、賃貸土地が道路に沿つた海岸の波打際に存する砂地で、右三〇坪および賃借人所有建物の敷地一二坪を除いた残余の部分がとりたてていう程の用途に供されていないときは、賃貸人は右無断転貸を理由として賃貸土地全部につき賃貸借契約を解除し得るものと解すべきであ…
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
事件番号: 昭和32(オ)911 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人たる地位の承継に関する合意がない場合において、新所有者が賃借人に対して行う土地明渡請求が信義則に反し権利の濫用にあたるとはいえない。 第1 事案の概要:土地の所有者D(訴外)が、本件土地を被上告人(新所有者)に売り渡した。上告人(賃借人)は、Dが賃貸借上の権利義務を被上告人に承継させる意思を…