判旨
上告審において新たな事実関係に基づく主張を行うことは許されず、原審で主張されなかった事実は判断遺脱の違法を構成しない。
問題の所在(論点)
原審で主張していなかった「和解による新契約の成立」という事実を、上告審において新たに主張し、原判決の判断遺脱を理由に上告を基礎づけることができるか。
規範
上告審は事後審であり、その審判は原審の確定した事実関係を前提として行われる。したがって、原審で主張されなかった新たな契約の成立等の新事実は、特段の事情がない限り、上告理由の基礎とすることはできない。
重要事実
上告人は、和解によって新たな契約が成立したと主張して原判決を非難したが、当該事実は原審(控訴審)において主張された形跡がなかった。
あてはめ
本件において、上告人が主張する和解による新契約成立の事実は、原審の記録上、主張された形跡が認められない。また、原審の認定に反する事実を認めるべき特段の事情を裏付ける証拠も存在しない。したがって、原判決が当該事実について判断を示さなかったとしても、判断遺脱の違法があるとはいえない。
結論
上告審において原審未主張の事実を基礎とする主張は認められず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
民事訴訟法上の適時提出主義や上告審の事後審構造を確認する事案。実務上は、原審までの主張立証の範囲が上告審の審理対象を画定することを明確に示している。
事件番号: 昭和32(オ)1059 / 裁判年月日: 昭和34年7月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審において主張立証されなかった事実は、上告審において新たに主張することは許されず、裁判所がそれに基づき判断しなくても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、本件強制執行の債務名義である公正証書記載の債務が、通謀虚偽表示(民法94条1項)や錯誤(同法95条)に基づく無効なものであると主張し、…