判旨
民法730条は、同族間の扶助義務を定めた訓示的規定にすぎず、具体的な権利義務を創設するものではない。また、養親子間において悪意の遺棄等の事情がない限り、親族間の不和のみでは縁組を継続しがたい重大な事由には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 民法730条の規定は、親族間に具体的な法的義務を課すものか。 2. 被上告人の行為が「縁組を継続しがたい重大な事由」(民法814条1項3号)に該当するか。
規範
1. 民法730条は、直系血族及び同居の親族間の互選扶助義務を定めているが、これは倫理的な指針を示す訓示的規定であり、具体的な法律上の権利義務を創設するものではない。 2. 民法814条1項3号(現行814条1項3号)にいう「縁組を継続しがたい重大な事由」の存否は、単なる親族間の不和ではなく、悪意の遺棄や共同生活の破綻といった客観的事実に基づき判断される。
重要事実
養親である上告人らが、養子である被上告人に対し、離縁を求めて提訴した事案。上告人らは、被上告人が上告人らを悪意で遺棄したこと、及び上告人らの親族である訴外D(直系血族ではない者)との関係悪化等を理由に、縁組を継続しがたい重大な事由があると主張した。第一審及び控訴審は、被上告人による悪意の遺棄は認められず、親族関係の悪化も離縁事由にはならないとして請求を棄却したため、上告に至った。
あてはめ
1. 民法730条について、上告人らは同条を根拠に親族間の義務違反を主張するが、同条は所論のような具体的な法律上の義務を定めたものではない。また、訴外Dは上告人らの直系血族ですらないため、同条の適用場面としても不適切である。 2. 縁組の破綻について、事実認定によれば被上告人が悪意をもって上告人らを遺棄した事実は認められない。したがって、上告人らの主張する諸事情は、法的な離縁事由である「重大な事由」を構成するに至らないと解される。
結論
本件における被上告人の行為は、民法814条1項3号にいう「縁組を継続しがたい重大な事由」に該当しないため、離縁請求は認められない。
実務上の射程
親族間の扶養や協力に関する論点において、民法730条を根拠に具体的な請求を行うことはできないことを示す際に用いる。また、裁判上の離縁において、感情的な対立や親族間の不和といった抽象的事情だけでは足りず、悪意の遺棄等の具体的要件が厳格に判断されることを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和32(オ)1088 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】養親子の間に敬愛の念が喪失され、夫婦関係の維持等の事情から将来にわたって愛情の回復が困難であると認められる場合には、民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」に当たると解される。 第1 事案の概要:養親(被上告人)が夜中、養子(上告人)に足腰をさすらせた後、自室に戻ろうとする養子を留めて…