判旨
民法768条3項に基づく財産分与の額及び方法の決定にあたっては、婚姻中の事情、財産、年齢、離婚後の生活能力、子女の養育監護等の一切の事情を考慮すべきである。
問題の所在(論点)
離婚による財産分与(民法768条)の額及び方法を定めるにあたり、裁判所が考慮すべき事項の範囲が問題となる。
規範
民法768条3項の「一切の事情」には、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情が含まれる。具体的には、①婚姻生活中の事情、②婚姻継続年数、③両者の財産状況、④年齢、⑤離婚後における生活能力の差異、⑥子女の養育監護に関する負担、⑦職業上の技能・能力等を総合的に考慮して決すべきである。
重要事実
上告人と被上告人の離婚に伴う財産分与が争われた事案。原審は、両者の婚姻生活における諸事情や継続年数に加え、各自の財産、年齢、離婚後の生活能力の格差、さらには子の養育監護状況や農業経営能力といった個別的事情を認定した。これに対し上告人は、財産分与の判断過程や事実認定に違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件において原審は、婚姻生活中の具体的状況、継続期間、双方の現有財産、年齢、離婚後の生活能力の差、子の養育といった多角的な視点から「一切の事情」を考慮している。また、農業経営能力といった専門的な能力についても認定・判示しており、財産分与の根拠を明らかにしている。このような判断過程は、財産分与の趣旨(清算的要素・扶養的要素)に照らして妥当な事実の考慮といえる。
結論
原審が一切の事情を考慮してなした財産分与の判断に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
財産分与の算定に関するリーディングケースの一つ。答案上は、清算的要素のみならず、扶養的要素(生活能力の差異)や慰謝料的要素を含めた「一切の事情」を総合考慮する際の根拠として引用できる。特に、子の養育や将来の生活能力といった「扶養的財産分与」の必要性を論じる際の規範として有用である。
事件番号: 昭和32(オ)333 / 裁判年月日: 昭和34年2月19日 / 結論: 棄却
裁判上の離婚の場合においては、訴訟の最終口頭弁論当時における当事者双方の財産状態を考慮して、財産分与の額および方法を定めるべきである。
事件番号: 昭和39(オ)539 / 裁判年月日: 昭和41年7月15日 / 結論: 棄却
一 民法第七六八条第三項によつて財産の分与の額を定めるには、金銭以外の財産をもつてすることができ、この場合には、その財産を特定すれば足りる。 二 人事訴訟手続法第一五条第一項によつて財産の分与の申立をするには、分与を求める額および方法を特定してすることを要しない。