一 民法第七六八条第三項によつて財産の分与の額を定めるには、金銭以外の財産をもつてすることができ、この場合には、その財産を特定すれば足りる。 二 人事訴訟手続法第一五条第一項によつて財産の分与の申立をするには、分与を求める額および方法を特定してすることを要しない。
一 民法第七六八条第三項による財産の分与の額の定め方 二 人事訴訟手続法第一五条第一項による財産の分与の申立方法
民法768条,人事訴訟手続法15条1項,民訴法186条
判旨
裁判所が財産分与の額を定めるに際しては、必ずしも金銭をもって定める必要はなく、現物特定による分与も可能であり、その評価額を判示する必要はない。また、離婚訴訟に附帯して財産分与の申立てをする場合、分与を求める額や方法を特定せず、抽象的な申立てをすれば足りる。
問題の所在(論点)
離婚に伴う財産分与において、1. 裁判所は分与額を金銭で定め、その評価額を判示しなければならないか。2. 当事者の申立てにおいて、分与の額および方法を特定して記載する必要があるか(申立ての特定性)。
規範
1. 裁判所が民法768条3項(771条で準用)に基づき分与の額を定める際、必ずしも金銭による必要はなく、現物財産を特定すれば足り、評価額の判示は不要である。2. 離婚の訴えに附帯する財産分与の申立て(人事訴訟法、旧家事審判法関連)は、本来家庭裁判所の権限に属する事項を訴訟手続の便宜上取り扱うものであるため、請求の趣旨に具体的な額や方法を特定する必要はなく、抽象的な申立てで足りる。
重要事実
上告人と被上告人の離婚訴訟において、裁判所は財産分与として特定の土地および建物を分与するよう命じた。上告人は、分与額が金銭で特定されていない点、および被上告人の申立てにおいて具体的な分与額や方法が示されていなかった点を不服として上告した。また、分与対象の建物が被上告人の商売の場であり、上告人の唯一の居住用建物であるといった生活状況も争点となった。
事件番号: 昭和32(オ)333 / 裁判年月日: 昭和34年2月19日 / 結論: 棄却
裁判上の離婚の場合においては、訴訟の最終口頭弁論当時における当事者双方の財産状態を考慮して、財産分与の額および方法を定めるべきである。
あてはめ
裁判所が土地建物を具体的に特定して分与を命じている以上、評価額を付さずとも現物による分与として適法である。申立てについても、財産分与は本質的に家庭裁判所の後見的判断に委ねられた事項であり、訴訟手続に附帯する場合でも、手続の経済と当事者の便宜を考慮すれば「財産分与を求める」という抽象的な意思表示があれば十分である。被上告人が子供らと生活し、分与建物で商売を継続することが妥当であるとの事情に照らせば、上告人が代替の居住地を失うとしても、当該分与は裁量の範囲内として是認される。
結論
1. 財産分与は現物特定によることができ、評価額の判示は不要である。2. 申立ては具体的額・方法の特定を要さず、抽象的で足りる。
実務上の射程
財産分与申立ての実務において、申立人が具体的な分与内容を特定していなくとも、裁判所は職権で適切な分与内容(現物分与を含む)を決定できるとする「非訟的性格」を裏付ける。答案上は、財産分与の申立ての性質や、現物分与の可否・手続的要件が問われた際に、処分の自由や申立ての特定の例外として引用する。
事件番号: 昭和32(オ)421 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法768条3項に基づく財産分与の額及び方法の決定にあたっては、婚姻中の事情、財産、年齢、離婚後の生活能力、子女の養育監護等の一切の事情を考慮すべきである。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の離婚に伴う財産分与が争われた事案。原審は、両者の婚姻生活における諸事情や継続年数に加え、各自の財産、年齢…