裁判上の離婚を請求する者はこれに附帯して離婚に基づく損害賠償及び財産分与の双方を併合して請求することを妨げず、その場合には裁判所は財産分与額を定めるにつき損害賠償の点をその要素として考慮することができない。
離婚の訴の附帯請求として離婚に基づく損害賠償及び財産分与の双方を併合して請求することの可否
民法709条,民法768条,人事訴訟手続法7条,人事訴訟手続法15条
判旨
裁判上の離婚請求に付帯して離婚に基づく不法行為の損害賠償(慰謝料)と財産分与を併合して請求することは認められる。その場合、裁判所は、損害賠償の点を財産分与額の算定要素として考慮することはできなくなる。
問題の所在(論点)
裁判上の離婚において、離婚に基づく損害賠償請求と財産分与請求を併合して請求することができるか。また、その場合に財産分与額の算定において損害賠償の要素を考慮できるか。
規範
裁判上の離婚を請求する者は、これに付帯して離婚に基づく損害賠償請求と財産分与請求の双方を併合して請求することができる。ただし、両者を併合して請求した場合には、裁判所は財産分与額を定めるに際し、損害賠償(慰謝料)の点をその要素として考慮することはできない。
重要事実
上告人は、裁判上の離婚請求に際し、不法行為に基づく損害賠償請求および民法768条に基づく財産分与請求を併合して提起した。原審は、上告人に対し、慰謝料として200万円、財産分与として300万円の支払を命じた。これに対し、両者の併合請求の適否や、財産分与における慰謝料要素の取扱いが争点となり、上告がなされた。
あてはめ
本件において、上告人は離婚請求に付帯して慰謝料と財産分与の双方を請求している。判例の立場によれば、両請求の併合は手続上妨げられない。もっとも、慰謝料を独立した損害賠償請求として審理・認容する以上、同一の精神的苦痛を理由とする損害を財産分与の額に反映させることは、二重の評価を避ける観点から許されない。原審は、慰謝料200万円と財産分与300万円をそれぞれ別個に算定しており、財産分与において損害賠償の点を要素として考慮していないものと解されるため、その判断は正当である。
結論
損害賠償と財産分与の併合請求は可能である。その場合、財産分与額の算定において損害賠償の要素を考慮することはできない。
実務上の射程
実務上、財産分与には「慰謝料的要素」を含めることが可能であるが、本判決は、慰謝料を別途独立して請求した場合には、財産分与からその要素を排除すべきという二重補填防止の論理を示すものである。答案上は、財産分与の性質(清算的・扶養的・慰謝料的)を論ずる際、独立の損害賠償請求がなされているか否かによって、分与額の算定における考慮要素が変わる点に注意して引用すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)469 / 裁判年月日: 昭和31年2月21日 / 結論: 棄却
一 夫婦がその一方甲の有責不法な行為によつて離婚のやむなきに至つたときは、その行為が必ずしも相手方乙の身体、自由、名誉等に対する重大な侵害行為にはあたらない場合でも、乙は、その離婚のやむなきに至つたことについての損害の賠償として、甲に対し慰藉料を請求することができる。 二 前項の場合において、乙が甲に対し、財産分与請求…
事件番号: 昭和31(オ)371 / 裁判年月日: 昭和33年1月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】離婚原因となった事実に基づく損害賠償請求は、相手方だけでなく、その共同不法行為者である第三者に対する請求についても離婚の訴えと併合して提起できる。また、自己の父が妻と不倫関係にある場合に、夫がその事実を知りながら看過・加担した場合には、夫自身も共同不法行為責任を負い、かつ夫からの離婚請求は認められ…
事件番号: 昭和32(オ)333 / 裁判年月日: 昭和34年2月19日 / 結論: 棄却
裁判上の離婚の場合においては、訴訟の最終口頭弁論当時における当事者双方の財産状態を考慮して、財産分与の額および方法を定めるべきである。