離婚訴訟において裁判所が財産分与を命ずるにあたつては、当事者の一方が婚姻継続中に過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額及び方法を定めることができる。
離婚訴訟における財産分与と過去の婚姻費用分担の態様の斟酌
民法768条3項,民法771条,人事訴訟手続法15条
判旨
裁判所は、財産分与の額及び方法を定めるに際し、当事者の一方が過当に負担した過去の婚姻費用の清算のための給付をも含めて判断することができる。
問題の所在(論点)
離婚に伴う財産分与(民法768条3項)の額及び方法を定めるにあたり、婚姻継続中に生じた過去の婚姻費用の分担の不均衡(過当な負担)を清算の対象に含めることができるか。
規範
民法771条、768条3項に基づき、裁判所が財産分与を定める際は、当事者双方の「一切の事情」を考慮すべきである。婚姻継続中における過去の婚姻費用の分担の態様は、この「一切の事情」の一つに含まれる。したがって、財産分与には、夫婦の共同財産の清算や離婚後の扶養だけでなく、婚姻費用の分担に生じた不均衡(一方による過当な負担)の清算を含めることができる。
重要事実
本件は、離婚訴訟に伴う財産分与が争われた事案である。婚姻継続中、当事者の一方が本来の分担義務を超えて過当に婚姻費用を負担していたという事情があった。原審は、この過去の婚姻費用の清算を考慮に入れて財産分与の額及び方法を定めたが、上告人はこれを不当として、財産分与の枠組みに婚姻費用の清算を含めることの可否を争い、上告した。
あてはめ
民法が財産分与において「一切の事情」を考慮すると定めている以上、婚姻生活中に形成された経済的実態を総合的に評価すべきである。婚姻費用の分担は夫婦の共同生活における基本的な義務であり、その態様は財産形成や消費のあり方に直結する。本件において、一方が過当に婚姻費用を負担していたという事実は、婚姻生活中の財産関係を是正する上で無視できない要素であり、財産分与の算定過程でこれを調整することは、条文の趣旨に合致する適当な判断であると解される。
結論
婚姻継続中の過去の婚姻費用の清算は、財産分与の額及び方法を定める際に考慮することができ、それを含めた給付を命じることは適法である。
実務上の射程
財産分与の三要素(清算的、扶養的、慰謝料的)のうち、本判決は特に清算的側面において過去の婚姻費用の未払いや過剰負担を吸収できることを示した。答案上は、婚姻費用分担請求が別途なされていない場合でも、財産分与の「一切の事情」として主張・立論する際の根拠として用いる。ただし、既になされた別件の調停・審判で解決済みの事項まで二重に考慮することはできない点に注意を要する。
事件番号: 昭和57(オ)56 / 裁判年月日: 昭和59年7月20日 / 結論: 棄却
大韓民国法を準拠法とする離婚に伴う財産分与及び慰藉料請求において、財産分与請求を認めない同国の民法のもとで有責配偶者が支払うべきものとされる慰藉料の額がわが国の離婚給付の社会通念に照らして著しく低額であると認められる場合には、右財産分与請求につき同法を適用することは、法例三〇条にいう「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗」に反するも…
事件番号: 昭和32(オ)333 / 裁判年月日: 昭和34年2月19日 / 結論: 棄却
裁判上の離婚の場合においては、訴訟の最終口頭弁論当時における当事者双方の財産状態を考慮して、財産分与の額および方法を定めるべきである。