有責配偶者である夫からされた離婚請求であっても、別居が一三年余に及び、夫婦間の未成熟の子は三歳の時から一貫して妻の監護の下で育てられて間もなく高校を卒業する年齢に達していること、夫が別居後も妻に送金をして子の養育に無関心ではなかったこと、夫の妻に対する離婚に伴う経済的給付も実現が期待できることなど判示の事実関係の下においては、右離婚請求は、認容されるべきである。
未成熟子がいる有責配偶者からの離婚請求が認容された事例
民法1条2項,民法770条
判旨
有責配偶者からの離婚請求は、夫婦間に未成熟の子が存在する場合であっても、それだけで直ちに排斥されるものではなく、諸事情を総合考慮して信義則に反しない限り容認される。
問題の所在(論点)
民法770条1項5号所定の事由がある場合において、有責配偶者からの離婚請求が、未成熟の子が存在する状況下で信義則(同条2項、1条2項)に反し許されないか。
規範
有責配偶者からの離婚請求が信義則に照らし容認されるかは、(1)有責性の態様・程度、(2)相手方の婚姻継続意思・感情、(3)離婚による相手方の精神的・社会的・経済的状態、(4)未成熟の子の監護・教育・福祉の状況、(5)別居後の生活関係、(6)時の経過を総合考慮して判断すべきである。未成熟の子が存在する場合でも、特段の事情(子の福祉への具体的支障等)がない限り、右請求が直ちに否定されるわけではない。
重要事実
夫(被上告人)は、妻(上告人)と4人の子を残して家出し、別の女性と内縁関係を築いた有責配偶者である。別居期間は約14年に及び、婚姻期間(約15年)に匹敵する。4人の子のうち3人は成人・独立しており、三男(高校2年生)のみが未成熟子であった。夫は家庭裁判所の審判に基づき、長年にわたり婚姻費用(月額15万円等)を継続的に送金しており、離婚に際しても700万円の支払いを提案していた。
あてはめ
まず、別居期間は約14年に達しており、双方の年齢や同居期間に照らし相当な長期間といえる。次に、未成熟子である三男は既に高校卒業間近であり、夫による継続的な送金実績から、離婚後もその養育・福祉に重大な支障が生じるとは認められない。さらに、夫は多額の解決金を提案しており、妻の経済的不利益に対する一定の配慮がなされている。したがって、妻の苦痛を考慮しても、離婚請求を排斥すべき特段の事情はなく、信義則に反するとはいえない。
結論
有責配偶者からの離婚請求を認容した原審の判断は正当であり、離婚は認められる。
実務上の射程
昭和62年大法廷判決の3要件(相当な長期間の別居、未成熟の子の不存在、相手方の過酷状況の不存在)のうち、第2要件を「絶対的要件」ではなく「総合考慮の一要素」へと相対化させた重要な判例である。答案上は、未成熟子がいる場合でも諦めず、その年齢や監護状況、経済的給付の継続性を具体的に指摘して信義則違反を否定する流れで活用する。
事件番号: 昭和62(オ)1001 / 裁判年月日: 昭和63年2月12日 / 結論: 破棄差戻
有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦が二二年間別居し、その間に未成熟子がいないときには、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。