有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦が二二年間別居し、その間に未成熟子がいないときには、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。
有責配偶者からの離婚請求が長期間の別居等を理由として認容すべきであるとされた事例
民法1条2項,民法770条
判旨
有責配偶者からの離婚請求は、別居が相当の長期間に及び、未成熟の子が存在せず、相手方配偶者が過酷な状態に置かれる等の特段の事情がない限り、信義則に反せず許容される。
問題の所在(論点)
不貞行為等により婚姻関係を破綻させた有責配偶者からの離婚請求(民法770条1項5号)が、信義則(民法1条2項)に照らして許容されるか。
規範
民法770条1項5号所定の事由につき専ら責任のある有責配偶者からの離婚請求であっても、以下の3要件を充たす場合には、信義則(民法1条2項)に反するものとして排斥されることはない。①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶこと、②その間に未成熟の子が存在しないこと、③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等、離婚認容が著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと。
重要事実
上告人(夫)と被上告人(妻)は昭和23年に婚姻し、2児をもうけた。夫は昭和38年頃から事務員の女性と親密になり、昭和40年から別居を開始して不倫相手と同居、子を認知した。別居期間は約22年に及び、その間に子供たちは成人した。夫は婚姻関係が破綻したとして、有責配偶者の立場から離婚を請求した。
あてはめ
まず、本件の別居期間は約22年であり、同居期間や双方の年齢(婚姻約39年、別居開始時夫30代後半)と対比しても「相当の長期間」といえる(①充足)。次に、2人の子は既に成人しており「未成熟の子」は存在しない(②充足)。そして、相手方配偶者が離婚によって極めて過酷な状態に置かれる等の「特段の事情」の有無については、原審が審理していないため不明であるが、これらの要件を検討せずに有責性のみで請求を棄却することは許されない。
結論
本件離婚請求は、苛酷条項(特段の事情)に該当しない限り、有責配偶者からの請求であることをもって直ちに拒絶されるものではない。
実務上の射程
有責配偶者からの請求を認めた最大判昭62.9.2の射程を確認した事例。答案上は「相当の長期間」の判断において別居期間絶対数だけでなく同居期間との比率を考慮すること、及び「苛酷条項」として経済的給付の有無等が考慮される点に留意して論じる。
事件番号: 昭和61(オ)260 / 裁判年月日: 昭和62年9月2日 / 結論: 破棄差戻
一 有責配偶者からされた離婚請求であつても、夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求である…