判旨
農地買収計画の樹立後に法定期間継続して行われた公告は、それが計画の公表を目的とするものである以上、予想公告の性質を帯びていたとしても当然に無効とはならない。
問題の所在(論点)
農地買収計画の樹立後に行われた公告が、将来の処分を予期させる「予想公告」としての性質を有する場合、その公告は無効となり、ひいては買収処分全体の効力に影響を及ぼすか。
規範
行政処分に先立つ公告の有効性については、当該公告が法律の定める期間および手続に則り、かつ処分の内容を確定させるための公示としての機能を果たしているか否かによって判断される。単に将来の処分を予想させる性質を有する公告(予想公告)であっても、法定の計画樹立後になされ、かつ法定期間継続して公告されているのであれば、その手続的効力は肯定される。
重要事実
上告人は、農地買収計画に基づく公告について、その内容が計画の確定前になされた「予想公告」にすぎないと主張し、買収処分の無効を訴えた。第一審判決が確定した事実によれば、本件公告は農地買収計画が樹立された後、法定の期間にわたり引き続き行われていた。
あてはめ
本件では、判示された買収計画が適法に樹立されており、その後の公告は法定期間継続して実施されている。このような事実関係の下では、公告が将来の確定を前提とした予想的な側面を持っていたとしても、法定の手続的要件を充たしている以上、公告としての実質を欠くものとはいえない。したがって、手続上の瑕疵は認められず、公告は有効であると解される。
結論
本件公告は無効とはいえず、これに基づきなされた買収処分を無効とすることはできない。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…
行政手続における公告の有効性が争点となる事案において、形式的な時期の前後や性格のみならず、法定期間の遵守や公告の継続性といった実態を重視して有効性を判断する際の指針となる。もっとも、本判決は農地改革という特殊な歴史的背景下のものであり、現代の行政手続法下の不利益処分等にそのまま適用できるかは慎重な検討を要する。
事件番号: 昭和31(オ)313 / 裁判年月日: 昭和33年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地買収計画において、登記簿上の所有者を相手方としてなされた処分は、真の所有者がその相続人である場合でも、当然に無効となるものではない。また、買収令書の交付欠如や異議決定の未了、現況の判断の困難性などの事由も、買収計画を当然無効とする理由にはならない。 第1 事案の概要:福島県知事による農地買収計…
事件番号: 昭和33(オ)91 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消事由にすぎない瑕疵がある場合であっても、その瑕疵が処分を当然無効ならしめるほどの重大かつ明白なものでない限り、当該処分は当然には無効とならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収処分に以下の無効原因があると主張した。(1)県係員の虚偽指示に基づく買収計画、(2)異議却下時の農地委…
事件番号: 昭和27(オ)597 / 裁判年月日: 昭和33年2月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収において、登記簿上の所有者を対象とした処分は、真実の所有者と異なる場合であっても、所定の不服申立手続を経て確定した以上、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:農地委員会は、登記簿上でD名義となっていた農地につき、Dが不在地主であるとして買収計画を樹立し、昭和…
事件番号: 昭和28(オ)1266 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
農地所有権の移転後、移転登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた農地買収処分は、当然無効と解すべきではない