判旨
相殺の抗弁において自働債権の存在が認められない場合には、相殺による債務の消滅という効果は生じず、当該抗弁に基づく主張は理由がないものとして排斥される。
問題の所在(論点)
被告が相殺の抗弁を主張した場合において、裁判所が自働債権の存在を否定したときに、相殺の主張を排斥することができるか。また、その判断プロセスに違法があるか。
規範
相殺の抗弁が有効に成立するためには、自働債権が有効に存在することが前提となる。自働債権の存在が認められない場合には、相殺の要件を欠くため、相殺の主張を認めることはできない。
重要事実
上告人は、原審において相殺の抗弁を主張したが、原判決(二審)は、上告人が相殺に供したとされる自働債権(所論相殺債権)の存在自体を認めなかった。これに対し、上告人は原判決に違法があるとして上告を申し立てた事案である。
あてはめ
原判決の判文によれば、上告人が主張する相殺債権(自働債権)の存在が認められないと判断されている。自働債権が存在しない以上、相殺による決済機能や債権消滅の効果が生じる余地はない。したがって、原審が相殺の抗弁を認めなかった判断に違法性は認められない。
結論
本件相殺の債権は認められないため、相殺の主張には理由がなく、上告を棄却する。
実務上の射程
相殺の抗弁に関する基礎的な判断を示したものである。実務上、相殺の抗弁が提出された際には、まず自働債権の発生原因事実の存否が争点となり、その存在が証明されない場合には、予備的抗弁としての判断(既判力の制限等)を待たずに、単純に主張が理由ないものとして処理されることを示唆している。
事件番号: 昭和34(オ)128 / 裁判年月日: 昭和35年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】小切手用紙が騙取され小切手が偽造されたという主張には、白地補充権を授与しなかった旨の主張までが含まれるとは解されない。 第1 事案の概要:上告人は、本件小切手が振出日付および金額を白地のまま振り出されたものである点について、原審において「小切手用紙は訴外Dから騙取され、小切手は偽造されたものである…