判旨
裁判の脱漏により訴訟が依然として係属しているか否かは、事実上の記録の取り扱いに依らず、客観的な請求と裁判との対比によって判断される。したがって、先行訴訟で判断が漏れた請求と同一の訴えを提起することは、二重起訴の禁止に抵触し許されない。
問題の所在(論点)
裁判の脱漏が生じている場合に、当該請求部分について「事件が裁判所に係属している」(二重起訴の禁止)といえるか。また、その継続の有無を判断する基準は何か。
規範
二重起訴の禁止(民事訴訟法142条、旧231条)の適用に関し、訴訟が依然として継続しているか否かは、訴訟記録が事実上完結したものとして取り扱われたかという形式的事実ではなく、客観的に当事者の請求とこれに対する裁判の内容とを対比して、裁判の脱漏(同法258条)があるか否かによって判断すべきである。
重要事実
上告人は、先行する控訴事件(前訴)において、農地の買収売渡処分の無効確認を求める請求を付加的に拡張した。しかし、前訴判決はその主文において単に控訴を棄却するにとどまり、拡張された請求部分については一切の判断を示さなかった(裁判の脱漏)。その後、上告人は改めて同一の無効確認を求める本訴を提起したが、原審は前訴が依然として継続中であるとして、本訴を二重起訴にあたり不適法と判断したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
本件では、前訴において買収売渡処分の無効確認の請求がなされたにもかかわらず、前訴判決の主文ではこれに対する判断が与えられていない。この場合、客観的に当事者の請求と裁判の内容を対比すれば、当該請求部分について裁判の脱漏があったといえる。訴訟の継続は客観的な請求の状態によって決まるため、たとえ事実上訴訟記録が完結したものとして取り扱われていたとしても、未判断の請求部分はなお前訴の裁判所に係属していると解される。したがって、本訴のうち当該無効確認を求める部分は、前訴と重複する二重訴訟に該当する。
結論
本件訴訟のうち、前訴で裁判の脱漏となった部分と同一の確認を求める部分は、二重起訴として不適法である。また、登記嘱託行為の無効確認については、登記抹消請求を求めるべきであり、嘱託行為自体の無効確認を求めることは確認の利益を欠き不適法である。
事件番号: 昭和36(オ)732 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 棄却
一 農地買収の時期が売渡の時期より後であつても、買収処分は無効とはいえない。 二 農地の買収、売渡計画の買収、売渡の時期の変更につき公告手続を経ないでした買収処分も無効ではない。
実務上の射程
裁判の脱漏がある場合、当該部分はなお従前の裁判所に係属するため、別訴を提起すると142条により却下される。救済策としては、前訴の裁判所に対し裁判の脱漏を理由とする更生・続行を求めるべきであるという答案上の指針となる。また、登記手続の不備を争う際の「確認の利益」の対象選択についても、嘱託行為という中間的過程ではなく、登記抹消という直接的な法的地位の回復を求めるべきであることを示唆している。
事件番号: 昭和38(オ)62 / 裁判年月日: 昭和40年12月23日 / 結論: その他
行政事件訴訟特例法の下において、行政処分無効確認訴訟が、当該処分につき同一被告に対し処分の無効を前提とする私法上の法律関係に関する訴訟の係属中に提起された場合においても、後訴をもつて前訴と二重訴訟の関係にあるものとなし得ないのはもとより、訴の利益を欠くものとみることもできない。
事件番号: 昭和36(オ)1320 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効となるための「瑕疵の明白性」は、処分の外形上客観的に、誤認が一見して看取できるか否かにより決すべきであり、行政庁の調査怠慢の有無は直接関係しない。 第1 事案の概要:行政庁が、被上告人の自作地である農地を小作地であると誤認し、農地買収処分を行った事案。原審は、本件農地が実際には自…
事件番号: 昭和32(オ)923 / 裁判年月日: 昭和36年5月26日 / 結論: 棄却
一 知事の許可を得ることを条件として農地の売買契約をしたとしても、いわゆる停止条件を附したものということはできない。 二 農地の売主が故意に知事の許可を得ることを妨げたとしても、買主は条件を成就したものとみなすことはできない。
事件番号: 昭和36(オ)1072 / 裁判年月日: 昭和37年7月12日 / 結論: 棄却
所有者の代表者の表示を誤つてした農地買収処分も無効ではない。