所有者の代表者の表示を誤つてした農地買収処分も無効ではない。
所有者の代表者の表示を誤つてした農地買収処分の効力。
旧自作農創設特別措置法16条
判旨
行政処分に瑕疵がある場合、出訴期間経過後であっても重大かつ明白な瑕疵があれば無効を主張できるが、所有者の表示誤り(代表者名の誤り)程度では、当然には無効原因とならない。
問題の所在(論点)
行政処分の出訴期間経過後に、処分の瑕疵(特に所有者等の表示の誤り)を理由として、無効を主張することができるか。また、所有者の代表者名の誤記が処分の無効原因に当たるか。
規範
行政処分の無効原因については、瑕疵が重大かつ明白であることを要する。所有者を誤った買収処分であっても、その違法が直ちに当然の無効原因となるわけではなく、特段の事情がない限り、取消事由にとどまる。
重要事実
上告人Aの所有地について農地買収処分がなされた際、当該処分において上告人Aの所有地であることは認識されていたが、その代表者の表示を誤って記載するという瑕疵があった。上告人側は、出訴期間経過後にこの瑕疵を理由として処分の無効を主張した。
あてはめ
事件番号: 昭和36(オ)1022 / 裁判年月日: 昭和37年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が重大かつ明白であることを要する。農地でないことが客観的に明白な土地を農地と誤認してなされた買収処分は、その瑕疵が重大かつ明白であり、当然無効である。 第1 事案の概要:本件土地は、かつては耕作されていたが、地盤沈下や台風による堤防決壊の影響で海水が浸入…
まず、出訴期間を経過した後であっても、利害関係人は当該処分の無効を主張することは可能である。しかし、本件の買収処分においては、上告人Aの所有地として買収が行われており、所有者を根本的に誤ったものではなく、単に代表者の表示を誤ったに過ぎない。このような瑕疵は、処分の根幹を揺るがす重大かつ明白なものとはいえず、無効原因には当たらないと評価される。
結論
出訴期間経過後も無効主張は可能だが、本件の代表者表示の誤りは無効原因とはならないため、買収処分は有効である。
実務上の射程
出訴期間経過後の争訟において、取消事由と無効事由を峻別する実務上重要な指針となる。特に不動産処分等における表示の軽微な誤りは、原則として無効事由(重大かつ明白な瑕疵)には当たらないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…
事件番号: 昭和26(オ)162 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 破棄自判
一 行政処分の無効確認を求める訴は、処分行政庁を被告として提起することができる。 二 農地所有者が死亡し家督相続によつて農地の所有権が相続人に移転した場合において、登記簿上の所有者たる被相続人宛の買収令書が相続人の親族の者に交付せられ同人がこれを右相続人に送付したときは、相続人が買収令書を返送しても、右買収令書による農…
事件番号: 昭和28(オ)1266 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
農地所有権の移転後、移転登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた農地買収処分は、当然無効と解すべきではない
事件番号: 昭和36(オ)732 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 棄却
一 農地買収の時期が売渡の時期より後であつても、買収処分は無効とはいえない。 二 農地の買収、売渡計画の買収、売渡の時期の変更につき公告手続を経ないでした買収処分も無効ではない。