判旨
商人が取引先に対し、金策の便宜を図る目的で融通手形を振り出す行為は、その商人の「営業の部類に属する行為」にあたる。
問題の所在(論点)
商人が取引先に対して融通手形を振り出す行為が、商法上の「営業に関する行為」に該当するか。特に、代理権の範囲や商事債務の成否に関わり、当該行為の営業附随性が問われた。
規範
商人が取引先に対し、金策の便宜上、融通手形を振り出す行為は、その商人の「営業に関する行為(営業の部類に属する行為)」と解するのが相当である。
重要事実
製材及び木材業を営む上告人と、その取引先である木材商Eは、以前から木材の取引を行い、相互に融通手形を交換する関係にあった。本件において、上告人の長男Dが上告人の代理人として、上告人名義で本件約束手形(融通手形)を振り出した。これに対し、当該手形の振出行為が上告人の営業の範囲内に属するか否かが争われた。
あてはめ
上告人とEは、単なる知人関係ではなく、木材業を営む商人同士として継続的な木材取引を行っていた。このような継続的な取引関係にある商人同士において、資金繰りを円滑にする目的で融通手形を交換することは、円滑な取引の維持・促進に資するものである。したがって、本件の融通手形の振出は、単なる個人的な好意ではなく、上告人の事業に関連して行われた「営業に関する行為」であると評価できる。
結論
商人が取引先との間で融通手形を振り出す行為は、その営業に関する行為に該当する。したがって、代理人による当該振出行為の効力は本人に帰属する。
実務上の射程
本判決は、融通手形の振出が商法上の補助的商行為(503条)に該当することを示唆したものである。実務上は、支配人の代理権の範囲(商法21条1項)や、商行為の委任を受けた代理人の権限範囲を判断する際、直接的な取引のみならず、取引維持のための融通手形発行も「営業の範囲内」に含まれ得るという理屈で活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)53 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】清算中の会社が、債務消却を目的として設立された別会社を介し、債権回収等の便宜のために手形を取得する行為は、清算の目的の範囲内の行為として有効である。 第1 事案の概要:清算中の被上告会社は、E鉱業に対する債務弁済消却を主目的として設立されたD興産を介し、上告会社が代金減額分返還のために振出した受取…