判旨
不法占有による損害賠償額の算定において、当事者間に争いのない適正賃料額を基準とすることは、特段の事情がない限り正当である。
問題の所在(論点)
不法占有に基づく損害賠償額を算定する際、当事者間に争いのない適正賃料額を基準とすることの是非、および上告審において初めて主張された法的規制(地代家賃統制令等)の適用の可否が問題となる。
規範
不法行為(民法709条)に基づく損害賠償額の算定において、不動産の不法占有による損害額は、原則として当該物件の適正な賃料相当額を基準として算出する。裁判所は、当事者間に争いのない事実がある場合、特段の事情がない限り、その事実を基礎として損害を算定すべきである。
重要事実
上告人が本件家屋を不法に占有したとして、損害賠償を求められた事案。原審において、本件家屋の適正賃料が月額1,041円以上であることについては当事者間に争いがなかった。上告人は、上告審に至って初めて、地代家賃統制令の適用により賃料が制限されるべきであると主張した。
あてはめ
本件家屋の適正賃料が月額1,041円以上である事実は、原審において当事者間に争いがなかった。また、地代家賃統制令の適用による減額の可能性については、上告人は原審で一切主張していない。したがって、裁判所が争いのない適正賃料額をそのまま損害額算定の基準とした判断は、適法かつ正当であると評価される。
結論
適正賃料額を損害賠償の基準とした原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
損害賠償額の算定における「賃料相当損害金」の立証において、自白(民訴法179条)の効力を確認する趣旨で用いられる。適正賃料についての合意がある場合、後から公法上の規制等を理由にその額を争うことは、事実審で主張しない限り認められないという訴訟法上の規律を示す。
事件番号: 昭和31(オ)342 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸借において、解約申入れに正当事由があると認められるか否かは、認定された事実関係を総合的に考慮して判断される。本件では、原審が認定した諸般の事情に基づき、解約申入れに正当事由があると判断したことは相当である。 第1 事案の概要:本判決文からは具体的な事案の詳細は不明であるが、被上告人(賃貸…