判旨
建物の客観的に相当な賃料を算定するにあたり、裁判所は建物の構造、利用関係、近隣の繁華性、周辺の取引実例、公租公課、保険料等の諸事情を総合的に勘案して判断すべきである。また、裁判所がこれらの諸事情を考慮して相当賃料額を判断した以上、その判断過程の詳細を逐一説示する必要はない。
問題の所在(論点)
建物の相当賃料を算定するに際して裁判所が考慮すべき事項、および判決文における判断過程の説示の要否が問題となる。
規範
建物の相当賃料の算定は、建物の構造、利用関係、付近の殷賑(いんしん)の程度、建物売買および賃貸借の実例、ならびに公課、保険料等の諸事情を参酌し、客観的に判断すべきである。また、裁判所が判決においてこれら諸事情を大体考慮の中において勘案判定した場合には、その判断過程の細部をすべて説示することを要しない。
重要事実
本件建物の賃料算定が問題となった事案において、原審は鑑定人の鑑定に基づき、建物の構造や利用関係、付近の繁華性、売買・賃貸借の実例、公課、保険料等の諸事情を参酌して、一ヶ月金6000円を客観的に相当な賃料であると判断した。これに対し、上告人は、原判決の判断過程に説示不備の違法があると主張して上告した。
あてはめ
原審は、鑑定人が建物の構造、利用状況、周辺環境、取引事例、維持費用(公課・保険料)といった多角的な視点からなした鑑定結果を採用している。これらの要素は建物の客観的な価値を反映するものであり、これらに基づいて導き出された賃料額は客観的に相当なものと認められる。裁判所はこれらの諸事情を全体として勘案した上で結論を得ており、その判断に至る個別の思考過程を逐一書き並べずとも、理由不備等の違法があるとはいえない。
結論
建物の構造や周辺状況等の諸事情を総合的に考慮して相当賃料を算定した原審の判断は正当であり、その判断過程の詳細を説示しなかったとしても違法ではない。
実務上の射程
借地借家法32条等の賃料増減額請求権に関する紛争において、継続賃料(あるいは新規賃料)の算定手法を論じる際の基礎となる。また、判決の理由の程度の限界(民訴法253条1項6号関係)を示すものとしても活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)752 / 裁判年月日: 昭和33年2月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法占有による損害賠償額の算定において、当事者間に争いのない適正賃料額を基準とすることは、特段の事情がない限り正当である。 第1 事案の概要:上告人が本件家屋を不法に占有したとして、損害賠償を求められた事案。原審において、本件家屋の適正賃料が月額1,041円以上であることについては当事者間に争いが…