判旨
法人の代表者が、外形的に法人の職務の範囲内と認められる行為を行った場合、当該行為が実質的に業務の遂行に必要でないとしても、民法44条1項(現行民法44条)の規定に基づき、法人は損害賠償責任を負う。
問題の所在(論点)
法人の代表者が行った手形振出行為が、行為の外形から客観的にみて法人の業務範囲内と認められる場合に、民法44条1項の「職務を行うについて」に該当するか。また、相手方の過失の有無が法人の責任に影響するか。
規範
代表者の行為が、行為の外形を客観的にみて法人の業務を遂行するに必要と認められるものである場合には、民法44条1項の損害賠償責任が成立する。また、相手方に重大な過失がない限り、法人はその責任を免れることはできない。
重要事実
上告人(法人)の代表者が、40万円の貸金債務に関連して手形を振り出した。上告人側は、当該手形振出が職務権限外であることや、更改契約の存在、相手方の過失を主張して責任を争った。
あてはめ
本件における手形の振出は、その行為の外形を客観的に観察すれば、上告人法人の業務を遂行するに必要な行為と認められないことはない。したがって、職務執行性が認められる。また、被上告人(相手方)において、当該行為が職務権限外であること等につき過失があったとは認められない。よって、代表者の行為につき上告人は責任を免れない。
結論
上告人は民法44条1項に基づき、代表者の行為について損害賠償責任を負う。本件上告は棄却される。
実務上の射程
法人の代表者による不法行為の成立要件である「職務を行うについて」の判断基準として、いわゆる外形標準説を端的に示した判例である。答案上では、行為の主観的な目的ではなく、客観的な外形で判断することを論証する際に引用すべきである。
事件番号: 昭和41(オ)1204 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
無権限者が機関方式により手形を振り出し本人名義の手形を偽造した場合であつても、右の手形振出が本人から付与された代理権の範囲をこえてなされたものであり、かつ、手形受取人において右無権限者が本人名義で手形を振り出す権限ありと信ずるにつき正当の理由がある等原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、本人は、民法第一…