判旨
裁判所が釈明権を行使するか否か、および証人等に対する対質を命じるか否かは、原則として裁判所の裁量に属する事案である。
問題の所在(論点)
裁判所が当事者の釈明申立や対質の申立に応じなかったことが、訴訟手続上の違法(釈明権行使義務違反や裁量権の逸脱)に該当するか。
規範
裁判所による釈明権の行使(民事訴訟法149条参照)および証人・当事者に対する対質の実施(同法202条2項、210条参照)は、訴訟指揮の一環として原則として裁判所の裁量に委ねられる。
重要事実
附帯上告人(選定当事者)側は、原審において釈明の申立等を行ったが、裁判所はこれを容れなかった。また、附帯上告人は対質の申立が受け入れられず尋問権が不当に制限されたこと、証拠調べの調書が書き換えられたこと等を主張し、原審の判断に違法があると訴えて附帯上告を提起した。
あてはめ
まず、釈明権の行使や対質を命じるかどうかは裁判所の広範な裁量に属する。本件記録によれば、附帯上告人が求問権の行使や対質の申立をした事実は資料上認められず、また尋問権が不当に制限された事跡も認められない。さらに、調書が書き換えられたという主張を裏付ける資料も存しない。したがって、原審が釈明や対質の申立を容れなかったとしても、裁判所の裁量の範囲内であり、違法とはいえない。
結論
裁判所の釈明権行使および対質の実施は裁量事項であり、本件において原審がこれらを行わなかったことに違法はない。したがって、附帯上告は棄却(一部却下)される。
実務上の射程
裁判所の訴訟指揮権、特に釈明権や証拠調べの具体的な態様に関する裁量権の広範さを確認した判例である。答案上は、釈明義務違反を主張する場面において、義務へ転化する特段の事情(釈明しなければ著しく不当な結果を招くなど)がない限り、原則として裁判所の裁量であることを示す論拠として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)419 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 棄却
証拠調の申請につきその許否を決することなくして結審したのは、訴訟の指揮およびその経過に徴すれば、その取調の要がないとしてこれを排斥した趣旨と解することを相当とする。