判旨
死因贈与に近い文脈における意思表示の存否について、贈与者の健康状態や親族関係、贈与の不自然さを考慮しつつも、原審の証拠選択と事実認定を尊重し、意思表示の不存在や再審事由の存在を否定した。
問題の所在(論点)
病弱老衰かつ脳軟化症の状態にある者が、唯一の資産を親族の了解なく特定のものに贈与したという不自然な事実関係の下で、原審の意思表示を肯定した認定に違法があるか。また、後の離婚判決の確定が再審事由に準ずる破棄事由となるか。
規範
意思表示の存否を含む事実認定は、専ら原審の証拠取捨選択および判断に属する事項であり、特段の事情がない限り、上告理由として認められない。また、別件の離婚判決が確定した事実は、本件贈与契約の効力を争う民事訴訟において、当然に旧民訴法420条(現行民訴法338条)所定の再審事由(関係判決の変更)には該当しない。
重要事実
贈与者Dは、唯一の不動産である宅地建物を、妻や実子ら計6名の相続人の了解を得ないまま、孫G(養子)および長男の妻Bに対して贈与した。当時Dは病弱老衰かつ脳軟化症に罹患しており、贈与契約から約3ヶ月後に死亡した。手続上も、贈与証書の欠如、登記権利証の不備、旧印鑑による印鑑証明の使用といった不自然な点が指摘されていた。また、受贈者Bは後に夫(Dの長男)との離婚判決が確定していた。上告人は、これらの事情から贈与の成立を否定すべきと主張して上告した。
あてはめ
多数意見は、上告人の主張(贈与の不自然さの指摘)を「ひっきょう原審の専権に属する証拠の取捨判断ならびに事実の認定を非難するもの」として退けた。反対意見が指摘する「病弱老衰」「唯一の不動産の贈与」「登記手続の不備」といった具体的懸念事項についても、法律上の判断を覆すに足りる適法な上告理由とはみなされなかった。離婚判決についても、本件判決との間で法律上の再審事由に規定される関係には立たないと判断された。
結論
本件上告を棄却する。原審の認定した贈与契約の成立は維持され、別件離婚判決の確定も本件の結論に影響しない。
事件番号: 昭和32(オ)1124 / 裁判年月日: 昭和35年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】負担付贈与において、受贈者が贈与者の老後の扶養を期待させるなどの負担を負っている場合、当該贈与が虚偽表示にあたるとは限らず、有効に成立し得ると判示された。 第1 事案の概要:贈与者Dが、被告(受贈者)に対し、調停に係る全財産の一部である本件不動産を贈与した。この贈与は、Dが自身の老後を被告に養って…
実務上の射程
意思表示の存否が争われる事案において、当事者の健康状態や取引の不自然さといった間接事実が豊富であっても、それらを理由に事実認定の違法を突くことの困難さを示している。実務上は、意思無能力(民法3条の2)の主張や公序良俗違反(90条)の文脈で検討すべき事実群であるが、本判決はあくまで事実認定の専権事項として上告を退ける基準を提示している。
事件番号: 昭和26(オ)634 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
一 家を同じくすることは、継親子に基く準血族の関係を成立させるための要件であるが、その存続のための要件ではないと解するのが相当である。 二 継母と継子の子(継孫)との間に一旦継親子関係に基く準血族の関係が成立した以上、その後、右継母がその配偶者たる実父と相携えて家を去り、次いで右実父が死亡しても、前記準血族の関係は、未…
事件番号: 昭和30(オ)95 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: その他
遺言者の生前の遺言無効確認の訴は不適法である。
事件番号: 昭和30(オ)615 / 裁判年月日: 昭和32年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記の登記原因が事実と符合しなくとも、その登記が現在の実体的権利関係に合致している限り、当該登記は有効である。 第1 事案の概要:上告人は訴外Dから本件宅地を買い戻して所有権を取得した後、訴外Eに対してこれを贈与した。本件宅地についてはEへの所有権移転登記がなされていたが、その登記原因は実際…
事件番号: 昭和28(オ)1115 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法定代理人である後見人から不動産の処分につき代理権を授与された復代理人が、その後代理人として売買契約を締結した場合、その売買の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:上告人の法定代理人である後見人Eは、訴外Dに対し、本件不動産の処分に関する代理権を授与した。Dは、昭和23年2月20日、後代理人と…