一 家を同じくすることは、継親子に基く準血族の関係を成立させるための要件であるが、その存続のための要件ではないと解するのが相当である。 二 継母と継子の子(継孫)との間に一旦継親子関係に基く準血族の関係が成立した以上、その後、右継母がその配偶者たる実父と相携えて家を去り、次いで右実父が死亡しても、前記準血族の関係は、未だ消滅しないと解するのが相当である。
一 継親子関係に基く準血族の関係と家を同じくすることの要否 二 継親子関係に基く準血族の関係が消滅しない一事例
旧民法728条,旧民法729条
判旨
継親と継子の間に継親子関係が生じた後、継子に子が生まれ、その子が継子と家を同じくする継親の家に入った場合、継親と継子の子との間に準血族関係(継祖母・継孫関係)が生じる。一度成立した準血族関係は、その後に家を異にしたとしても当然には消滅せず、夫の死亡時においても旧民法729条2項の要件を満たさない限り存続する。
問題の所在(論点)
旧民法下において、(1)継親と継子の子との間に準血族関係が成立するか、(2)一度成立した準血族関係は離家によって消滅するか、(3)継親の夫の死亡によって準血族関係が消滅するか。
規範
1. 継父母と継子の子との間の準血族関係は、継父母と継子との間に継親子関係が成立した後、継子に子が生まれ、その子が継子と家を同じくする継父母の家に入った場合に成立する。 2. 「家を同じくすること」は、準血族関係成立の要件であっても、その存続のための要件ではない。 3. 旧民法729条2項所定の場合(夫の死亡後に家を去る等)に該当しない限り、夫の死亡によって当然に準血族関係が消滅することはない。
重要事実
D(継祖母)とE(継子)の間には継親子関係があった。被上告人は、DとEが継親子関係を生じた後にEの子として生まれ、当時Eと家を同じくするDの家に入った。その後、Dは大正15年に夫Fと共に家を去り、被上告人と家を異にするに至った。昭和6年に夫Fが死亡し、後にDも死亡したため、被上告人がDの遺産を相続したかどうかが争点となった。
事件番号: 昭和31(オ)630 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死因贈与に近い文脈における意思表示の存否について、贈与者の健康状態や親族関係、贈与の不自然さを考慮しつつも、原審の証拠選択と事実認定を尊重し、意思表示の不存在や再審事由の存在を否定した。 第1 事案の概要:贈与者Dは、唯一の不動産である宅地建物を、妻や実子ら計6名の相続人の了解を得ないまま、孫G(…
あてはめ
(1) 被上告人は、DとEの継親子関係成立後に、Eと家を同じくするDの家に入っているため、Dと被上告人との間には当然に準血族関係が生じている。 (2) 「家を同じくすること」は存続要件ではないため、Dと被上告人が後に家を異にした事実のみをもって準血族関係が消滅したとはいえない。 (3) Dは夫Fの死亡前に共に家を去っており、旧民法729条2項の「夫が死亡した後に家を去った場合」に該当しないため、夫Fの死亡によっても準血族関係は消滅していない。
結論
Dと被上告人の間の準血族関係は維持されており、被上告人がDの遺産を相続したとする原審の判断は正当である。
実務上の射程
旧民法下の親族・相続関係に関する判断であるが、一度成立した身分関係が形式的な生活実態の変化(離家)のみによって当然に消滅しないとする法理は、現在の親族法における身分関係の安定性という観点からも参考になる。また、建物が取り壊されても登記が存在する以上、敷地所有権に基づき抹消登記請求が可能であるという物権的請求権に関する傍論も重要である。
事件番号: 昭和34(オ)333 / 裁判年月日: 昭和36年9月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、後買主が登記を具備した場合、特段の事情がない限り、売主の前買主に対する登記移転義務は履行不能となる。また、中間省略登記がなされた場合であっても、それが実体上の権利関係に合致するものである限り、その有効性を否定することはできず、民法177条の対抗関係が維持される。 第1 事…
事件番号: 昭和30(オ)724 / 裁判年月日: 昭和32年1月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の登記原因が虚偽であっても、その登記が現在の真実の権利関係と合致するものであるならば、当該登記は有効である。 第1 事案の概要:被上告人B1は、本件家屋の所有権を家督相続により適法に取得した。一方で、本件家屋についてはB2を権利者とする所有権取得登記がなされていたが、その登記原因とされた贈与…
事件番号: 昭和28(オ)805 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戸主による家督相続人の指定は、指定権者にその決意があると認められ、かつ、その旨の届出が市町村長に受理された場合には、その効力を有する。 第1 事案の概要:戸主Dは、死亡前の十数年間にわたりEと事実上の夫婦関係にあった。Dは、Eの実弟である被上告人を自らの家督相続人に指定する決意を有していた。昭和1…
事件番号: 昭和33(オ)720 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続による不動産の取得も、対抗問題(民法177条)となり得るが、相手方がその権利取得の事実を争わない場合には、登記の欠缺を理由に権利取得を否定することはできない。 第1 事案の概要:被上告人らは、共同相続を原因として本件山林の共有権を取得した。これに対し上告人は、被上告人らが共有権を取得した事実自…