遺言者の生前の遺言無効確認の訴は不適法である。
遺言者生前の遺言無効確認の訴の適否
民訴法225条,民法985条
判旨
遺言の生前における無効確認の訴えは、現在の法律関係の存否を対象とするものではなく、将来発生すべき法律関係の存否を目的とするものにすぎないため、確認の利益を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
遺言者の生存中において、遺言の無効確認を求める訴えが、民事訴訟法上の「確認の利益」を有する(適法な確認の対象となる)か。
規範
確認の訴えは、原則として現在の法律関係の存否を目的とする場合に限り許容される。過去の法律関係や単なる事実関係、あるいは将来発生すべき法律関係は、原則として確認の対象とならない。なぜなら、司法の使命は法令の適用により現在の紛争を解決することにあり、未発生の法律関係について抽象的に解決することは、確認の訴えの必要性・実効性を欠くからである。
重要事実
遺言者(被上告人)は、公正証書により特定の建物を上告人に遺贈する旨の遺言をしたが、後に別の公正証書で当該遺贈を取り消した。これに対し、被上告人は遺言者自身として、自らが行った当初の遺言が無効であることの確認を求めて訴えを提起した。
事件番号: 昭和31(オ)630 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死因贈与に近い文脈における意思表示の存否について、贈与者の健康状態や親族関係、贈与の不自然さを考慮しつつも、原審の証拠選択と事実認定を尊重し、意思表示の不存在や再審事由の存在を否定した。 第1 事案の概要:贈与者Dは、唯一の不動産である宅地建物を、妻や実子ら計6名の相続人の了解を得ないまま、孫G(…
あてはめ
遺贈は死因行為であり、遺言者の死亡によって初めて効果を生じる。遺言者の生存中は受遺者に何ら権利を発生させず、期待権すら認められない。したがって、遺言の無効確認は「遺贈という法律行為(法律要件)」の確認、または「将来の法律関係」の不存在確認にすぎない。これは現在の法律関係の確認ではなく、遺言者の生存中にあらかじめ抽象的に解決すべき必要性も認められないため、確認の訴えの対象としての適格を欠くといえる。
結論
本件確認の訴えは、現在の法律関係を対象とするものではなく不適法であるため、却下を免れない。
実務上の射程
確認の利益における「対象選択の適否」に関する重要判例である。答案では、遺言のみならず、条件付権利や将来の法律関係の確認を求める事案において、本判例の「現在の法律関係」という規範を引用し、即時確定の利益の有無を論じる際の基礎として活用する。
事件番号: 昭和35(オ)1109 / 裁判年月日: 昭和37年5月24日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】自筆証書遺言の有効性判断において、全文の自書性に疑義がある場合や、押印の真正が争われている場合には、文書の体裁や発見の経緯、内容の不自然さを総合的に検討し、審理を尽くすべきである。 第1 事案の概要:亡Dの自筆とされる「分与証明書(乙1号証)」につき、被上告人は遺言書であると主張した。原審は鑑定等…
事件番号: 昭和33(オ)720 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続による不動産の取得も、対抗問題(民法177条)となり得るが、相手方がその権利取得の事実を争わない場合には、登記の欠缺を理由に権利取得を否定することはできない。 第1 事案の概要:被上告人らは、共同相続を原因として本件山林の共有権を取得した。これに対し上告人は、被上告人らが共有権を取得した事実自…
事件番号: 昭和31(オ)956 / 裁判年月日: 昭和35年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特定の立木を代物弁済として提供する代理権や登記費用の負担特約を締結する権限があるからといって、当然にその土地自体の所有権を移転させる代理権まで認められるものではない。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人の代理人Dとの間で、本件山林の立木を債務の代物弁済として供する旨の合意をし、立木の所有権保存…