一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の存否を判断するにあたつては、原則として、原告の相続分が被相続人から受けた生前贈与等によりなくなるか否かを考慮すべきものではない。 二 単に相続分及び遺産分割の方法を指定したにすぎない遺言の無効確認を求める訴は、固有必要的共同訴訟にあたらない。 三 同一の証書に二人の遺言が記載されている場合は、そのうちの一方につき氏名を自書しない方式の違背があるときでも、右遺言は、民法九七五条により禁止された共同遺言にあたる。
一 遺言無効確認訴訟における確認の利益の判断にあたり原告の相続分が生前贈与等によりなくなるか否かを考慮することの可否 二 遺言無効確認訴訟が固有必要的共同訴訟にあたらないとされた事例 三 同一の証書に記載された二人の遺言の一方に方式違背がある場合と民法九七五条
民法902条,民法903条1項,民法903条2項,民法908条,民法968条1項,民法975条,民法985条,民訴法62条,民訴法225条
判旨
遺言無効確認の訴えにおける確認の利益の存否は、原則として遺言の内容によって判断すべきであり、生前贈与による特別受益等の事情は考慮されない。また、同一証書に二人以上の遺言が記載されている場合、一方の方式に不備があっても、民法975条が禁止する共同遺言に該当する。
問題の所在(論点)
1.生前贈与により具体的相続分がなくなる可能性がある相続人に、遺言無効確認の訴えの利益が認められるか。 2.一方が方式を欠く場合であっても、同一証書に記載された複数の遺言は民法975条の禁止する「共同遺言」に当たるか。 3.遺言無効確認の訴えは固有必要的共同訴訟か。
規範
1.遺言無効確認の訴えにおける原告相続人の確認の利益は、遺言の内容によって定まる。生前贈与等により具体的相続分がなくなる可能性は、将来の遺産分割段階の問題であり、原則として確認の利益の判断に影響しない。 2.同一の証書に二人の遺言が記載されている場合、その一方が氏名の自書を欠く等の方式違背により無効であっても、民法975条にいう共同遺言に該当し、全体として無効となる。
重要事実
同一の証書に二人(遺言者ら)の遺言が記載されていた事案において、そのうち一方の遺言につき、氏名を自書しないという方式上の不備が存在した。また、本件訴訟を提起した相続人に対し、被相続人から生前贈与がなされており、将来の遺産分割において具体的相続分が消滅する可能性が指摘されていた。さらに、本件遺言無効確認の訴えが固有必要的共同訴訟に該当するか否かも争点となった。
あてはめ
1.遺言無効確認の訴えは、遺言の有効性を前提とする法的地位の不安定を解消するものであり、その利益の存否は遺言の内容自体から判断すべきである。特別受益の有無は遺産分割という別手続で考慮されるべき事項であるから、確認の利益を否定する理由にはならない。 2.民法975条の趣旨は、遺言の自由の確保と偽造・変造の防止にある。同一証書に二人の遺言が記載されている以上、たとえ一方に氏名の自書を欠く方式違背があっても、互いの意思表示が密接に関連し合う危険があるため、共同遺言としての性質は失われない。 3.本件訴訟の性質につき、原審が適法に確定した事実関係に基づき、固有必要的共同訴訟には当たらないと判断したことは正当である。
結論
1.確認の利益は認められる。 2.一方が方式違背であっても共同遺言に該当し、本件遺言は無効である。 3.本件訴訟は固有必要的共同訴訟ではない。
実務上の射程
共同遺言の禁止(975条)の適用範囲が広く解されている点に注意が必要である。また、遺言無効確認の訴えにおいて相続人の特別受益を理由に確認の利益を否定することは困難である。訴訟形態については、実務上、遺言無効確認の訴えは通常共同訴訟と解されており、本判決もその流れを汲むものである。
事件番号: 平成20(オ)999 / 裁判年月日: 平成22年3月16日 / 結論: 破棄自判
原告甲の被告乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるにもかかわらず,甲の乙に対する請求を認容し,甲の丙に対する請求を棄却するという趣旨の判決がされた場合には,上訴審は,甲が上訴又は附帯上訴をしていないときであっても,合一確定に必要な限度で,上記判決のうち丙に関する部分を,丙に不利益に変更することができる。
事件番号: 平成9(オ)2060 / 裁判年月日: 平成11年9月14日 / 結論: 棄却
いわゆる危急時遺言に当たり、立ち会った証人の一人があらかじめ作成された草案を一項目ずつ読み上げ、遺言者が、その都度うなずきながら「はい」などと返答し、最後に右証人から念を押され了承する旨を述べたなど判示の事実関係の下においては、民法九七六条一項にいう遺言の趣旨の口授があったものということができる。
事件番号: 平成14(受)432 / 裁判年月日: 平成14年9月24日 / 結論: 棄却
秘密証書によって遺言をするに当たり,遺言者以外の者が,市販の遺言書の書き方の文例を参照し,ワープロを操作して,文例にある遺言者等の氏名を当該遺言の遺言者等の氏名に置き換え,そのほかは文例のまま遺言書の表題及び本文を入力して印字し,遺言者が氏名等を自筆で記載したなど判示の事実関係の下においては,ワープロを操作して遺言書の…