原告甲の被告乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるにもかかわらず,甲の乙に対する請求を認容し,甲の丙に対する請求を棄却するという趣旨の判決がされた場合には,上訴審は,甲が上訴又は附帯上訴をしていないときであっても,合一確定に必要な限度で,上記判決のうち丙に関する部分を,丙に不利益に変更することができる。
固有必要的共同訴訟において合一確定の要請に反する判決がされた場合と不利益変更禁止の原則
民訴法40条,民訴法304条,民訴法313条
判旨
相続人の地位不存在確認の訴えは、共同相続人全員が当事者として関与し、合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟である。また、固有必要的共同訴訟において共同被告の一方に対する請求のみ認容された場合、上訴審は他方の被告に対する部分も不利益に変更して合一確定を図ることができる。
問題の所在(論点)
1. 相続人の地位不存在確認の訴えは、固有必要的共同訴訟か。2. 固有必要的共同訴訟において、原告が一部の被告に対してしか上訴していない場合に、上訴審は上訴されていない被告に関する部分も不利益に変更できるか。
規範
1. 相続欠格(民法891条)を理由とする相続人の地位不存在確認の訴えは、共同相続人の間で判決が矛盾することを防ぐため、共同相続人全員を当事者とすることを要する固有必要的共同訴訟である。2. 固有必要的共同訴訟において、第一審が一部の共同被告に対する請求のみを棄却し、上告審がこれを是正する場合、合一確定の要請から、不利益変更禁止の原則の例外として、上訴又は附帯上訴がなされていない共同被告に関する部分についても、必要最小限度の範囲で不利益に変更することができる。
重要事実
亡Aの子である被上告人が、他の子である上告人Y1及びY2に対し、Y2が遺言書を偽造した相続欠格者に該当すると主張して、Y2の相続人地位不存在確認を求めた。第一審が請求を棄却したため被上告人が控訴したところ、原審はY2に対する請求のみを認容し、Y1に対する控訴を却下した。これに対し、被告側(Y1及びY2)が上告した。
あてはめ
1. 本件は相続人の地位を争うものであり、共同相続人全員の間で合一に確定すべき固有必要的共同訴訟にあたる。2. 原審がY2についてのみ請求を認め、Y1についての棄却判決を維持したことは合一確定の要請に反する。3. Y2に相続欠格事由(遺言書の偽造)が認められる以上、事実関係及び審理状況に鑑み、上告審はY1に対する棄却部分についても取り消した上で、Y1・Y2両名に対し、Y2が相続人の地位を有しないことを確認すべきである。
結論
本件訴えは固有必要的共同訴訟であり、原審が一部の被告についてのみ認容した判断は法令違反である。原判決を破棄し、上告人Y2が相続人の地位を有しないことを確認する。
実務上の射程
相続回復請求や相続分に関する争いにおいて、固有必要的共同訴訟の性質を有する訴えの判別指針となる。また、共同被告の一部について上訴された場合の「合一確定に必要な限度での不利益変更」を認める訴訟法上の重要判例として、答案上、一部上訴と合一確定の処理を論じる際に用いる。
事件番号: 平成15(受)1153 / 裁判年月日: 平成16年7月6日 / 結論: 棄却
共同相続人が,他の共同相続人に対し,その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは,固有必要的共同訴訟である。
事件番号: 平成10(オ)1037 / 裁判年月日: 平成13年3月27日 / 結論: 棄却
遺言公正証書の作成に当たり当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても,この者によって遺言の内容が左右されたり,遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情のない限り,同遺言が無効となるものではない。
事件番号: 平成9(オ)2060 / 裁判年月日: 平成11年9月14日 / 結論: 棄却
いわゆる危急時遺言に当たり、立ち会った証人の一人があらかじめ作成された草案を一項目ずつ読み上げ、遺言者が、その都度うなずきながら「はい」などと返答し、最後に右証人から念を押され了承する旨を述べたなど判示の事実関係の下においては、民法九七六条一項にいう遺言の趣旨の口授があったものということができる。