遺言公正証書の作成に当たり当該遺言の証人となることができない者が同席していたとしても,この者によって遺言の内容が左右されたり,遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど特段の事情のない限り,同遺言が無効となるものではない。
遺言の証人となることができない者が同席してされた公正証書遺言の効力
民法(平成11年法律第149号による改正前のもの)969条,民法(平成11年法律第149号による改正前のもの)974条
判旨
遺言公正証書の作成において欠格者が同席しても、遺言内容が左右されたり真意による遺言が妨げられたりする等の特段の事情がない限り、作成手続は違法とならず遺言は有効である。
問題の所在(論点)
公正証書遺言の作成手続において、証人となることができない者(欠格者等)が同席していた場合、民法969条各号の方式に違反するものとして遺言が無効となるか。
規範
遺言公正証書の作成(民法969条)において、法所定の証人が立ち会っている以上、たまたま欠格者(民法974条)が同席していたとしても、直ちに無効とはならない。当該欠格者の同席によって遺言の内容が左右されたり、遺言者が自己の真意に基づいて遺言をすることを妨げられたりするなど「特段の事情」のない限り、当該遺言は有効であると解する。
重要事実
遺言者Dが公正証書遺言を作成する際、民法所定の証人が立ち会っていたが、受遺者Eの長女であるFらが同席していた。Fらは民法974条に定める証人の欠格事由に準ずる立場、あるいは同条の類推適用が問題となり得る立場であったが、本件遺言の内容がFらの同席によって左右された事実は認められなかった。
あてはめ
本件では、法定の証人が別途立ち会っており、形式的な人数要件は満たされていた。その上で、受遺者の近親者であるFらが同席していたものの、原審の認定によれば、Fらの介在によって遺言内容が不当に操作されたり、Dの自由な意思決定が阻害された事実は存在しない。したがって、作成過程に遺言の真実性を疑わせる「特段の事情」は認められないと評価される。
結論
本件公正証書による遺言は有効である。証人欠格者の同席は、遺言者の真意が阻害される等の特段の事情がない限り、遺言の効力に影響を及ぼさない。
実務上の射程
証人の「立ち会い」の厳格性を緩和し、実質的な遺言の自由を重視する判断である。答案上は、方式違反を主張する側に対し、単なる同席の事実だけでなく、遺言内容への干渉や真意の阻害という「特段の事情」の主張立証が必要であることを示す枠組みとして活用する。
事件番号: 平成13(受)398 / 裁判年月日: 平成16年2月26日 / 結論: 破棄差戻
現時点においては公証人の署名押印がある遺言公正証書原本について,当該原本を利用して作成された謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等の内容に食違いがあることなどを理由として,上記謄本作成の時点において公証人の署名押印がなかったとした原審の認定判断には,上記謄本の作成方法についての公証人及び書記の証言等は,その細部…
事件番号: 平成9(オ)2060 / 裁判年月日: 平成11年9月14日 / 結論: 棄却
いわゆる危急時遺言に当たり、立ち会った証人の一人があらかじめ作成された草案を一項目ずつ読み上げ、遺言者が、その都度うなずきながら「はい」などと返答し、最後に右証人から念を押され了承する旨を述べたなど判示の事実関係の下においては、民法九七六条一項にいう遺言の趣旨の口授があったものということができる。
事件番号: 平成20(オ)999 / 裁判年月日: 平成22年3月16日 / 結論: 破棄自判
原告甲の被告乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるにもかかわらず,甲の乙に対する請求を認容し,甲の丙に対する請求を棄却するという趣旨の判決がされた場合には,上訴審は,甲が上訴又は附帯上訴をしていないときであっても,合一確定に必要な限度で,上記判決のうち丙に関する部分を,丙に不利益に変更することができる。