共同相続人が,他の共同相続人に対し,その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは,固有必要的共同訴訟である。
共同相続人間における相続人の地位不存在確認の訴えと固有必要的共同訴訟
民訴法40条,民訴法134条,民法891条,民法898条
判旨
共同相続人が他の共同相続人に対し相続欠格事由の存在を理由に相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは、相続関係の処理における基本的事項を確定するものであるから、固有必要的共同訴訟にあたる。
問題の所在(論点)
特定の共同相続人が相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えの法的性質、および共同相続人の一部のみを被告とすることの可否(固有必要的共同訴訟性の成否)。
規範
共同相続人が他の共同相続人に対し、その者が相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは、遺産分割等の相続関係の処理における基本的な前提事項を確定させるものである。その趣旨・目的に照らせば、当該訴えは共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要する固有必要的共同訴訟と解すべきである。
重要事実
被相続人甲の死亡により、妻乙、子である上告人、被上告人、他2名が法定相続人となった。上告人は、被上告人が甲の遺言書を隠匿・破棄したことが民法891条5号の相続欠格事由に当たると主張。上告人は、他の共同相続人を加えず、被上告人のみを被告として、被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えを提起した。
事件番号: 平成20(オ)999 / 裁判年月日: 平成22年3月16日 / 結論: 破棄自判
原告甲の被告乙及び丙に対する訴えが固有必要的共同訴訟であるにもかかわらず,甲の乙に対する請求を認容し,甲の丙に対する請求を棄却するという趣旨の判決がされた場合には,上訴審は,甲が上訴又は附帯上訴をしていないときであっても,合一確定に必要な限度で,上記判決のうち丙に関する部分を,丙に不利益に変更することができる。
あてはめ
特定の相続人の地位の有無は、遺産分割をすべき当事者の範囲や相続分、遺留分の算定など、相続関係の処理における基本的な事項の前提となる。このような訴えは、既判力をもって地位を確定させることで遺産分割審判等での紛議を防止し、共同相続人全体の紛争解決に資することを目的とする。したがって、共同相続人の一部を排除して個別に判断することは紛争の解決として不十分であり、相続人全員の間で合一に確定する必要がある。本件訴えは、他の共同相続人を欠いているため適法とはいえない。
結論
本件訴えは、共同相続人全員を当事者とすべき固有必要的共同訴訟であるため、被上告人のみを被告とした上告人の訴えは不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
相続欠格や相続廃除による相続権喪失の確認を求める訴えを提起する場合、原告・被告を合わせて相続人全員を網羅しなければならない。答案上では、民事訴訟法における固有必要的共同訴訟の具体例として、権利関係の合一確定の必要性(管理処分権の帰属や紛争の抜本的解決)を論拠に本判例を引用し、当事者適格の欠如を導く流れで使用する。
事件番号: 昭和52(オ)360 / 裁判年月日: 昭和56年10月30日 / 結論: 棄却
一 民法九五八条の規定による公告期間内に相続申出をした者につき相続権確認訴訟が係属していても、右訴訟の当事者以外の者による相続申出について該訴訟の確定まで右公告期間が延長されるものではない。 二 民法九五八条の規定による公告期間を健過した相続人は、特別縁故者に対する相続財産分与後の残余財産についても相続権を有しない。
事件番号: 昭和50(オ)167 / 裁判年月日: 昭和50年9月30日 / 結論: 棄却
一、認知により法律上の親子関係が発生するには血縁関係にある父又は母においてその子を認知することを要し、そうではない者を戸籍上嫡出子として届け出ても、それにより認知の効力を生ずるものではない。 二、戸籍上嫡出子の届出がされている場合であつても、財産上の紛争に関する先決問題として、その訴訟において父子関係の不存在を審理確定…
事件番号: 平成17(受)833 / 裁判年月日: 平成18年7月7日 / 結論: その他
戸籍上AB夫婦の嫡出子として記載されているYが同夫婦の実子ではない場合において,Yと同夫婦との間に約55年間にわたり実親子と同様の生活の実体があったこと,同夫婦の長女Xにおいて,Yが同夫婦の実子であることを否定し,実親子関係不存在確認を求める本件訴訟を提起したのは,同夫婦の遺産を承継した二女Cが死亡しその相続が問題とな…