遺言無効確認の訴は、その遺言が有効であるとすればそれから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しない.ことの確認を求めるものと解される場合で、原告がかかる確認を求める法律上の利益を有するときは、適法と解すべきである。
遺言無効確認の訴の適否
民訴法225条,民法985条
判旨
遺言無効確認の訴えは、形式上は過去の法律行為の確認を求めるものであるが、遺言から生ずる現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求める趣旨と解され、紛争解決に直接的かつ有効な場合は、確認の利益が認められる。
問題の所在(論点)
遺言無効確認の訴えのように、形式的に「過去の法律行為」の無効確認を求める訴訟において、確認の利益(民事訴訟法上の適法性)が認められるか。
規範
確認の訴えは、原則として現在の権利又は法律関係を対象とすべきであり、過去の法律行為(遺言等)の無効確認は、本来その対象とならない。しかし、遺言が無効であればそこから派生する現在の特定の法律関係(承継されるべき遺産上の権利等)も存在しないことになる。したがって、請求の趣旨が過去の行為の形式をとっていても、それが現在の特定の法律関係の不存在確認を求める趣旨と解され、かつ、紛争の直接の対象である基本的事項(遺言の効力)を判示することが紛争解決機能として有効適切である場合には、確認の利益を肯定すべきである。
重要事実
亡Dが自筆証書遺言を作成し、全財産を共同相続人の一人に与える旨を記載したが、その受遺者の特定が不明確である等の理由により、相続人らが遺言の無効確認を求めて提訴した。一審および二審は、遺言は「過去の法律行為」であり、その有効無効の確認を求めることは現在の法律関係の確認ではないとして、確認の利益を否定し、訴えを却下した。
あてはめ
本件訴訟において、上告人らは遺言が無効であることを前提に、特定の相続人への遺産承継を否定しようとしている。この請求は、遺言が有効である場合に生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求める趣旨と解することが可能である。また、紛争の直接的な対象である「遺言の無効」を端的に判断することは、現在の個別的な法律関係に還元して表現し直すまでもなく、審理対象を明確にし、当事者間の紛争を抜本的に解決するために資するものであるといえる。
結論
本件遺言無効確認の訴えは、現在の特定の法律関係の不存在確認を求めるものとして、確認の利益が認められ、適法である。
実務上の射程
本判決は、証書真否確認の訴え(民訴法134条)以外の場面でも、過去の法律行為が現在の法律関係の基礎をなす場合には、例外的にその行為自体の無効確認を認める余地を示した。司法試験答案では、遺言や株主総会決議、労働契約の解雇などの無効確認において、紛争解決として「直接的かつ抜本的」であることを理由に、確認の対象の選択が適切である(方法の選択の相当性)と論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和63(オ)955 / 裁判年月日: 平成元年6月20日 / 結論: 破棄自判
自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。