判旨
金銭債務不履行の損害賠償額の予定が公序良俗に反する場合であっても、必ずしもその全部が無効となるわけではなく、暴利性の程度に応じた一部無効にとどめることが可能である。
問題の所在(論点)
1. 損害金の予定が実質的に利息の制限を免れる目的でなされた場合でも、裁判所は損害金の特約として性質決定できるか。 2. 公序良俗に反する高利の損害金約定は、当然にその全部が無効となるのか。
規範
1. 利息と損害金(賠償額の予定)は法律上の性質を異にするため、当事者の主張にかかわらずその性質決定は裁判所の職権に属する。 2. 損害金の約定が公序良俗(民法90条)に違反する場合であっても、直ちにその全部を無効とする必要はなく、妥当な限度を超える部分のみを無効と解することができる。
重要事実
債権者(被上告人)と債務者(上告人)の間で、約束手形債務の不履行があった場合に備え、公正証書によって高利の損害金を支払う旨の特約がなされた。上告人は、当該特約は実質的に利息の定めであり、かつその利率が著しく高額で公序良俗に反するため全部無効であると主張して争った。
あてはめ
1. 性質決定について:公正証書上に手形金の支払遅滞時の損害金条項が存在する場合、その法律上の性質の判定は裁判所の職責であり、当事者が利息であると主張していても裁判所は損害金の特約と認定できる。 2. 一部無効について:本件の損害金約定は、高利であっても公序良俗に反して全額が無効とされるべき状況ではなく、原審が妥当と認めた範囲で維持されることは正当である。
結論
本件上告を棄却する。損害金の約定が公序良俗に反する場合でも、必ずしも全部が無効になるわけではなく、一部無効として処理した原審の判断は相当である。
実務上の射程
利息制限法(本判決当時は旧法)の適用外となる損害金特約について、公序良俗による規律のあり方を示した。現代の利息制限法4条下では同法による制限が優先されるが、同法の制限を超え、かつ著しい暴利性が認められる事案における「公序良俗違反による一部無効」の論理は、損害賠償額の予定(民法420条)全般に適用し得る。
事件番号: 昭和35(オ)1023 / 裁判年月日: 昭和37年6月13日 / 結論: 破棄差戻
債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払つたとき、右制限をこえる金員は、当然残存元本に充当されるものと解すべきではない。