判旨
同時履行の抗弁権の根拠となる特約の存在については、当該特約に基づき履行遅滞責任を免れようとする側が証明責任を負う。
問題の所在(論点)
売買契約において、解除の効力を阻止するための「同時履行の抗弁権」の根拠となる特約の存否について、どちらの当事者が証明責任を負うか。
規範
契約解除の効力を否定するために、売買契約に伴う特定の特約(引渡債務の履行確保に関する特約等)の存在を主張する場合、その特約の存在が認められないことによる不利益は、当該特約の存在を主張して同時履行の抗弁を援用しようとする側が負う(証明責任の分配)。
重要事実
被上告人(売主)が売買契約の解除を主張したのに対し、上告人(買主)は、本件家屋に居住していた第三者を退去させる旨の特約が締結されていたと主張した。上告人は、この特約に基づく義務と代金支払債務が同時履行の関係にあると主張し、売主側の義務不履行を理由に契約解除の効力を争った。
あてはめ
上告人は、自らの居住目的を達成するために第三者を退去させる特約が存在したと主張し、それによって自己の代金支払債務の不履行を正当化しようとしている。このような特約の存在事実は、契約解除の効力を否定しようとする上告人にとって有利な事実であり、その存否が不明な場合に不利益を被るのは上告人であるといえる。したがって、当該特約の立証責任は上告人が負うと解される。
結論
契約解除の効力を否定するための根拠となる特約の存在については、その特約を主張する側に証明責任がある。本件において上告人が特約の存在を立証できない以上、解除を有効とした原審の判断は妥当である。
実務上の射程
同時履行の抗弁権(民法533条)に関して、債務不履行責任(履行遅滞)を免れるための抗弁事由として特約を主張する場合の証明責任の分配指針となる。実務上は、契約の本質的要素ではない付随的な特約の存否が争点となる場面で、主張者に立証を促す論拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)35 / 裁判年月日: 昭和33年6月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除権の行使が信義則に反するか否かは、賃借人の生活上の困窮や住居喪失の打撃と、賃貸人側の諸事情を比較衡量して判断すべきである。また、賃料支払請求がなされた際、賃借人が弁済供託の事実を主張立証している場合には、裁判所はその有効性を審理判断しなければならない。 第1 事案の概要:賃貸人(被…