判旨
管理権限を有する者が、民法602条所定の期間を超える賃貸借契約を締結する権限を本人から与えられている場合には、同条の制限を受けることなく有効に賃貸借契約を締結できる。
問題の所在(論点)
処分権限を有しない管理人であっても、本人から特定の権限を付与されている場合に、民法602条が定める期間の制限(土地については5年)を超えて賃貸借契約を締結することができるか。
規範
民法602条は、処分権限を有しない者が管理権限に基づいて賃貸借を行う場合の期間制限を定めたものであるが、管理人が本人から同条所定の期間を超える賃貸借をなす権限をあらかじめ与えられている場合には、当該制限は適用されず、その権限の範囲内において有効に契約を締結・更新することができる。
重要事実
本件宅地の管理人であるEが、被上告人Bに対して本件宅地を賃貸した。上告人は、Eには処分権限がなく管理権限があるに過ぎないから、民法602条により5年を超える期間の賃貸はできず、買収時において賃貸借が存続していたか不明であると主張して、賃貸借の成立を争った。原審は、Eが管理人として5年以上の期間賃貸借する権限を本人から与えられていた事実を認定した。
あてはめ
本件において、管理人Eは本件宅地の管理人として、これを5年以上の期間にわたって賃貸借する権限を適法に与えられていた。そうであるならば、Eがその権限に基づいてBとの間で締結した賃貸借契約は、民法602条の制限に拘束されるものではない。したがって、当該権限に基づき締結された賃貸借契約は、昭和23年7月の買収時においても有効に存続していたものと解するのが相当である。
結論
管理人が民法602条所定の期間を超える賃貸権限を有している場合には、同条の制限は適用されず、期間を超えた賃貸借も有効である。
事件番号: 昭和31(オ)816 / 裁判年月日: 昭和35年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事判決の既判力は当事者以外には及ばず、行政庁が確定判決と異なる判断をしても直ちに違法とはならない。また、買収処分の後の売渡処分の違法は、買収処分自体の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収処分等に関して、既になされた民事判決の判断内容と行政庁の判断が異なること、不動産登記…
実務上の射程
民法602条が「処分権限を有しない者」の行為を制限する趣旨は、本人の意に反する長期の拘束を防ぐ点にある。本判決は、本人の授権がある場合にはこの制限を解除できることを示しており、任意代理における権限の範囲の問題として処理できることを示唆している。答案上は、短期賃貸借の期間制限が問題となる場面で、授権の有無を確認する際の理屈として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)28 / 裁判年月日: 昭和33年6月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地買収処分において、真実の所有者でない登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、違法ではあるが当然無効とはならず、取消訴訟の対象となるにすぎない。 第1 事案の概要:所有者BがDに対し本件農地を売却し、Dが有効に所有権を取得した。しかし、登記簿上の名義人は依然としてBのままであった。国は、自…
事件番号: 昭和28(オ)608 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】真実の所有者でない者を対象とした農地買収処分は、違法ではあるが当然無効とはならない。真実の所有者が処分を知り得たのに不服申立期間を徒過した場合は、もはや訴訟でその違法を主張することは許されない。 第1 事案の概要:本件農地は、贈与により真実の所有者となった被上告人が占有・管理していたが、未登記のた…
事件番号: 昭和28(オ)1395 / 裁判年月日: 昭和30年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の違法性が重大であっても、それが当然無効とされるためには、瑕疵が明白であることを要する。本件のように農地としての性質を一部有する土地の買収処分において、農地性の判断に誤りがあるとしても、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人の所有する土地は、もともと農地であったが、一時的に…