判旨
当事者の主張が単なる証拠抗弁にすぎない場合、裁判所は当該陳述と異なる認定を行っても、弁論主義違反等の違法を構成しない。
問題の所在(論点)
当事者の主張と異なる事実を裁判所が認定することが、弁論主義の原則に反し、あるいは事実認定の裁量を逸脱する違法なものといえるか(主張が証拠抗弁にとどまる場合の裁判所の拘束力)。
規範
弁論主義が適用されるのは、主要事実に限られる。これに対し、証拠の価値判断や間接事実に係る主張は「証拠抗弁」にすぎず、裁判所は当事者の主張に拘束されることなく、自由な心証に基づき事実を認定することができる。
重要事実
上告人は、原審(控訴審)における証拠の取捨判断および事実認定に不服があるとして上告した。特に、被上告人が行っていた主張の内容と、原審が認定した事実との間に齟齬がある点について、裁判所の判断に違法があると主張した。
あてはめ
本件において、被上告人が行っていた所論の主張は、主要事実を直接構成するものではなく、事実認定の基礎となる証拠の価値や文脈を説明する「証拠抗弁」としての性格を有するものであった。そのため、裁判所が当該陳述の内容と異なる事実を証拠に基づき認定したとしても、それは原審の裁量に属する証拠の取捨判断の結果である。したがって、原判決の措置に証拠法則違反や事実誤認の違法は認められない。
結論
本件上告は棄却される。当事者の主張が証拠抗弁にすぎない場合、裁判所がそれと異なる認定をしても違法ではない。
実務上の射程
弁論主義の適用範囲(主要事実・間接事実の区別)に関する論述において、証拠の信用性や証拠力に関する主張が裁判所を拘束しないことを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)431 / 裁判年月日: 昭和31年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が口頭弁論において証拠(書証)の成立を認めた場合、その成立に争いがないものとして扱われ、裁判所がこれに基づき事実認定を行っても違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)の口頭弁論において、証拠として提出された「甲第二号証」の成立を認める旨の陳述を行っていた。しかし、上告人…