判旨
農地の賃貸借において、旧農地調整法9条2項に基づき「従前の賃貸借と同一の条件」で更新されたとみなされる場合、更新後の条件には賃料前払の特約は含まれない。また、更新拒絶後の事情は信義則違反の判断において必ずしも考慮されるものではない。
問題の所在(論点)
旧農地調整法9条2項により「従前の賃貸借と同一の条件」で更新されたとみなされる場合、賃料前払の特約が含まれるか。また、更新拒絶の意思表示後に生じた賃料不払等の事実は、更新拒絶の有効性や信義則の判断に影響を及ぼすか。
規範
期間の定めがある農地の賃貸借において、更新拒絶の意思表示がなされたとしても、法に基づき「従前の賃貸借と同一の条件」で更新されたとみなされる場合、その条件には特約(賃料前払等)が含まれない限り、原則的な賃貸借の態様が維持される。また、賃貸借終了を主張する時点より後の事情(賃料不払等)は、更新拒絶時における信義則違反の判断を左右しない。
重要事実
上告人(賃貸人)と被上告人(賃借人)は、昭和19年1月20日から同年12月末日までの期間で農地の賃貸借契約を締結した。上告人は昭和20年4月に更新拒絶の意思表示を行い、同年12月限りで契約が終了したと主張して農地の返還を求めた。これに対し、被上告人は旧農地調整法に基づき同一条件で更新されたと主張。上告人は、更新拒絶後の被上告人による賃料不払等の信義違反行為を理由に、更新の有効性や正当事由を争った。
あてはめ
まず、原審が認定していない賃料前払の特約は「従前の賃貸借と同一の条件」には含まれないと解するのが相当である。次に、上告人が主張する信義違反の事実(農地返還拒絶後の賃料不払等)は、上告人自らが賃貸借終了を主張している時点(昭和20年12月)よりも後に発生した事項である。したがって、更新拒絶の可否や信義則の判断において、これらの事後的な事情を考慮しなかった原審の判断に不当な点はない。また、本件は一時使用のための賃貸借とは認められない。
結論
本件賃貸借は旧農地調整法に基づき更新されたものと認められ、更新拒絶に正当な事由があるとはいえない。上告人の請求は棄却される。
事件番号: 昭和37(オ)820 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 棄却
何時でも貸主の請求に応じ賃貸農地の返還をするなどの定めで農地を耕作させるに至つた場合でも、当時施行の農地調整法第九条第四項により右約定は存しないものとみなされるから、解約申入に民法第六一七条第二項の適用がある。
実務上の射程
農地法上の更新拒絶における「正当事由」や信義則の判断時期に関する基準を示す。特に、法定更新された場合の「同一の条件」の範囲や、更新拒絶後の賃借人の態度が更新の効力自体に遡及的に影響しないという実務上の判断枠組みを提示している。
事件番号: 昭和30(オ)690 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において、賃借人に特に宥恕すべき事由がないまま数年間にわたる賃料延滞が生じている場合、その後に一部の支払がなされたとしても、契約解除を基礎付ける信頼関係の破壊という事実は左右されない。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)が上告人(賃借人)に対し、土地賃貸借契約の解約許可申請(農地法等に…
事件番号: 昭和28(オ)931 / 裁判年月日: 昭和30年9月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特定の土地が旧農地調整法上の「農地」に該当するか否かは、土地取得の動機、目的、将来の用途、沿革など、主観的および客観的諸般の事情を総合して判定すべきである。 第1 事案の概要:上告人は、本件係争土地について旧農地調整法上の農地であることを前提に、賃貸借の承継等を主張した。原審は、当該土地の取得目的…
事件番号: 昭和28(オ)1330 / 裁判年月日: 昭和30年12月2日 / 結論: 棄却
農地売渡処分の取消処分に対する出訴期間については、自作農創設特別措置法第四七条の二の規定によるべきではなく、行政事件訴訟特例法第五条の規定によるべきである。
事件番号: 昭和28(オ)657 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 破棄差戻
登記簿上の所有者を所有者としてした農地買収処分は、真の所有者がこれを知りまたは知り得べき状態にあつたにかからず、不服申立の方法を採らなかつた場合は、当然には無効ではない。