判旨
売買の一方の予約において、予約完結の意思表示がなされた場合、代金の提供がなくても、当然に目的物の所有権は予約完結権者へと移転する。
問題の所在(論点)
売買の一方の予約に基づき予約完結の意思表示を行う際、売買代金の提供が所有権移転の効力発生要件となるか。
規範
売買の一方の予約(民法556条1項)において、予約完結の意思表示がなされた際の効果として、特段の合意がない限り、代金の提供を伴わなくとも、その意思表示のみによって売買契約が成立し、当然に目的物の所有権移転の効力が生じる。
重要事実
上告人と被上告人との間で、本件不動産について売買の一方の予約が締結された。その後、被上告人は上告人に対し、昭和20年6月1日に予約完結の意思表示を行った。これに対し上告人は、予約完結の意思表示に際して代金の提供がなされていないことを理由に所有権移転を否定し、被上告人に対して建物の明渡しを求めて提訴した。
あてはめ
本件における契約は売買の一方の予約である。被上告人が予約完結の意思表示をしたことにより、当該意思表示の時点で売買契約が成立したと解される。予約完結の意思表示の効力として所有権が移転するためには、特段の事情がない限り、現実の代金提供は不要である。本件では昭和20年6月1日の意思表示により所有権が被上告人に移転しているため、上告人の所有権に基づく明渡請求は認められない。
結論
予約完結の意思表示に際し代金の提供は不要であり、当該意思表示によって不動産の所有権は被上告人に移転する。
実務上の射程
予約完結権が形成権であることを前提に、その行使による物権変動の要件を明確にしたものである。答案上は、556条に基づく予約完結権行使の効果を論じる際、代金支払義務と所有権移転義務が同時履行の関係にあるとしても、意思表示そのものによる所有権移転を認める根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)161 / 裁判年月日: 昭和32年3月8日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和32(オ)322 / 裁判年月日: 昭和34年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭債務の担保としての代物弁済契約において、目的物の価格が債務額を著しく超過する場合であっても、公序良俗違反等の特段の事情がない限り有効であり、家屋明渡し遅延に関する損害賠償額の予定も原則として有効である。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、約20万円の借入金等の債務を担保するため、時価100…