判旨
不当利得返還債務は性質上、当然に商行為によって生じた債務(商事債務)にあたるものではないから、特段の事情がない限り、その遅延損害金に適用される法定利率は商事法定利率(年6分)ではなく民事法定利率(年5分)による。
問題の所在(論点)
商行為等に関連して発生した不当利得返還債務の遅延損害金について、適用されるべき法定利率は、商事法定利率(旧商法514条の年6分)か、それとも民事法定利率(旧民法404条の年5分)か。
規範
不当利得返還債務は、法律上の原因なく利得したものを返還すべき義務であり、商行為そのものによって生ずる債務とは異なる。したがって、当該債務は民事上の債務であり、適用される法定利率は民事法定利率によるべきである。
重要事実
被上告人が上告人に対し、過払金(79万8678円50銭)の不当利得返還を請求した。原審は、当該過払金の返還債務を商事債務と認定し、商事法定利率である年6分の延滞利息を付して支払うよう命じた。これに対し、上告人が法定利率の適用誤りを理由に上告した。
あてはめ
本件における金79万8678円50銭の過払金返還債務は、不当利得返還債務としての性質を有する。このような不当利得返還債務は民事上の債務であって、商行為によって生じた商事債務と認めるべき根拠はない。したがって、商事法定利率である年6分を適用した原判決の判断は失当であり、民事法定利率である年5分を超える部分は認められない。
結論
過払金返還債務は民事債務であり、年5分の利率を超える請求部分は棄却される。
実務上の射程
商行為を原因とする契約が解除・無効となった場合の不当利得返還債務について、民事法定利率が適用されることを示した基本的な判例である。現行法下(令和2年施行改正民法)では法定利率が一本化・変動制となったが、債務の性質が商行為起因か否かという区別が問題となる場面での思考枠組みとして重要である。
事件番号: 昭和40(オ)1089 / 裁判年月日: 昭和44年5月27日 / 結論: 破棄差戻
最高裁昭和四一年(オ)第一二八一号、同四三年一一月一三日大法廷判決、民集二二巻一二号二五二六頁と同旨。