債務者が利息制限法所定の制限をこえた利息・損害金を元本とともに任意に支払つた場合においては、その支払にあたり充当に関して特段の意思表示がないかぎり、右制限に従つた元利合計額をこえる支払額は、債務者において、不当利得として、その返還を請求することができると解すべきである。
債務者が利息制限法所定の制限をこえた利息・損害金を元本とともに任意に支払つた場合と右制限に従つた元利合計額をこえる支払額に対する不当利得返還請求の許否
利息制限法1条,利息制限法4条,民法705条
判旨
利息制限法の制限を超える利息・損害金を元本と共に一括して支払った場合、充当に関する特段の指定がない限り、制限超過部分は元本に充当され、計算上元利合計が完済された後の支払分については不当利得返還請求が可能である。
問題の所在(論点)
利息制限法の制限を超える利息・損害金を、元本と一括して任意に支払った場合において、制限超過部分を元本に充当し、完済後の超過分について不当利得返還請求をなしうるか。
規範
金銭消費貸借において債務者が制限超過利息等を任意に支払った場合、当該部分は民法491条により残存元本に充当される。この理は制限超過利息等を元本と共に支払った場合にも妥当し、充当に関する特段の指定がない限り、まず制限超過部分を元本に充当し、なお残額があるときは元本に対する支払金としてこれに充当する。計算上元利合計が完済された後に支払われた金額は、債務が存在しないのに弁済されたものとして、民法の規定(703条)に基づき不当利得返還請求をすることができる。
重要事実
上告人は、被上告人の先代から30万円を、利息および遅延損害金ともに月5分(年60%)の約定で借り受けた。上告人は、貸付日から14か月22日経過した弁済日に、右約定利率に基づく利息・損害金を含めた合計55万5000円を任意に一括して支払った。
あてはめ
本件において、上告人が支払った55万5000円には、利息制限法所定の制限(年18%等)を大幅に超える月5分の利息・損害金が含まれている。支払にあたり特段の充当の指定が認められない本件では、制限超過分は当然に元本に充当されるべきである。そうすると、元本30万円および法定制限利率による利息・損害金の合計額を上回る支払部分は、債務が存在しないのに支払われたものといえる。したがって、かかる超過部分は不当利得を構成し、上告人はその返還を請求しうる。
結論
元本とともに制限超過利息等を支払った場合でも、元本充当の結果として計算上完済となった後の過払金については、不当利得返還請求が認められる。
実務上の射程
利息制限法1条・4条の「任意に支払った」場合の充当法理が、分割払い(継続的な支払)だけでなく一括払いの場合にも及ぶことを明示した。引き直し計算により「完済」が認められれば不当利得となるという、過払金返還請求の基本スキームを支える判例である。
事件番号: 昭和35(オ)1151 / 裁判年月日: 昭和39年11月18日 / 結論: 破棄差戻
債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は、民法第四九一条により、残存元本に充当されるものと解すべきである。
事件番号: 平成24(受)2832 / 裁判年月日: 平成26年7月24日 / 結論: 破棄差戻
元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合において,借主から約定の毎月の返済額を超過する額の支払がされたときには,当該超過額を将来発生する債務に充当する旨の当事者間の合意があるなど特段の事情のない限り,当該超過額は,その支払時点での残債務に充当され,将来発生する債務に充当されることは…
事件番号: 平成22(受)1983 / 裁判年月日: 平成25年4月11日 / 結論: 破棄差戻
継続的な金銭消費貸借取引に係る基本契約が過払金充当合意(過払金発生当時他の借入金債務が存在しなければ過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意)を含む場合には,別段の合意があると評価できるような特段の事情がない限り,まず過払金について発生した民法704条前段所定の利息を新たな借入金債務に充当し,次いで過…