判旨
農地の売渡しによって国が所有権を失った後に、当該農地を対象として売渡留保の指定をしても、その指定は効力を有しない。
問題の所在(論点)
農地法制に基づく売渡しにより、既に個人が所有権を取得した農地に対して、事後的に売渡留保の指定を行うことができるか(指定の有効性)。
規範
売渡留保の指定は、国が所有する農地を対象として行われるべきものであり、既に売渡しが完了し、国の所有に属しなくなった農地に対してなされた指定は無効である。
重要事実
兵庫県知事は、被上告人らに対し、昭和22年7月から同23年10月にかけて本件農地を売り渡し、被上告人らにその所有権を取得させた。しかし、その後の昭和24年10月10日付の県報により、自作農創設特別措置法施行規則に基づき、当該農地を対象とする売渡留保の指定の告示を行った。
あてはめ
本件農地は、昭和24年の売渡留保指定の時点において、既に昭和22年から23年の売渡しにより被上告人らの所有に帰しており、国の所有を離れていた。売渡留保という制度の性質上、国が保有し処分権限を有する土地を前提とするものであるから、他人の所有となった土地に対して指定を行っても、その法的効力を生じさせることはできない。
結論
本件売渡留保の指定は、既に売渡しがなされた農地を対象とするものであり、無効である。
実務上の射程
行政処分の対象となる物件が、処分の前提となる法的状態(本件では国の所有)を欠いている場合に、その処分の効力が否定されるという「処分の客体」の不存在に関する一般論として活用できる。答案上は、時系列に沿って権利変動を整理し、処分の有効要件を検討する際の根拠となる。
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