電力会社による使用電力量の計量装置の設定の誤りにより、会社が、一二年余の期間、電気料金等を過大に支払い、その間、当該会社はもとより電力会社でさえ過大に電気料金等を徴収している事実を発見することができず、当該会社が過収電気料金等の返還を受けることは事実上不可能であった場合において、右計量装置の設定の誤りが発見された後に、右両者間において、過収電気料金等として返還すべき精算金額について交渉の上合意が成立したなどの判示の事情の下では、右電気料金等の返戻による収益が帰属すべき事業年度は、右合意による支払日の属する事業年度である。 (反対意見がある。)
使用電力量の計量装置の設定の誤りにより数年度にわたり過大に支払われた電気料金等の返戻による収益の帰属すべき事業年度が右返戻についての合意による支払日の属する事業年度であるとされた事例
法人税法22条
判旨
過去の複数年度にわたる電気料金の過払金返還請求権は、事実上の発見が不可能であった特段の事情がある場合、合意により具体的金額が確定した日の属する事業年度の益金に算入される。
問題の所在(論点)
過去の複数年度にわたり発生していた不当利得返還請求権の益金帰属時期は、客観的に権利が発生した各年度か、それとも具体的金額について合意が成立した年度か。法人税法22条2項の「収益」の帰属時期が問題となる。
規範
法人税法上の益金の帰属時期は、原則として権利が確定した時期による(権利確定主義)。もっとも、過去の事業年度に発生した不当利得返還請求権であっても、当事者がその発生原因となる事実を全く発見できず、返還を受けることが事実上不可能であったと認められる場合には、新たな事実の発生を受けて返還金額等の合意が成立した時点をもって、税法上の権利が確定したものとみるのが相当である。
重要事実
上告人(法人)は、電力会社の計器設定誤りにより、昭和47年から59年までの約12年間にわたり電気料金等を過大に支払っていた。電力会社は昭和59年12月にこの事実を発見して陳謝し、昭和60年3月28日に具体的精算額を提示。翌29日に精算終了条項を含む確認書が取り交わされた。課税庁は、この返還金全額を昭和60年3月期の益金に算入すべきとして更正処分を行ったのに対し、上告人は各支払年度の所得計算をやり直すべき(修正申告対象)であると主張して争った。
事件番号: 平成9(行ツ)13 / 裁判年月日: 平成10年11月10日 / 結論: 棄却
日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法一四条に基づき同法三条の規定による土地の使用に関して適用される土地収用法七二条所定の使用する土地に対する補償金は、その銭全額を、その払渡しを受けた日…
あてはめ
本件では、12年余にわたり電力会社の請求が正当であるとの認識の下で支払が完了しており、電力会社自身も設定誤りを発見できなかった。このような状況下では、上告人が返還を受けることは事実上不可能であったといえる。したがって、各支払年度に権利が確定したとして所得計算を行うのは相当ではない。本件請求権は、過誤が発見されたという新たな事実を受け、確認書により具体的金額の合意が成立した昭和60年3月29日に、税法上の権利として確定したと評価される。
結論
本件過収電気料金等の返戻による収益は、合意が成立した日の属する事業年度(昭和60年3月期)の益金に算入すべきである。
実務上の射程
権利確定主義の例外として、客観的には権利が発生していても「事実上の発見不能」という特段の事情がある場合に、後発的な合意時点への帰属を認めた射程の狭い判例である。答案では、原則的な権利確定主義を述べた上で、本件のような「事実上の行使不能・発見不能」を例外的な考慮要素として摘示すべきである。
事件番号: 昭和27(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
財産税法による課税価格の再更正があつた場合の当初の更正の取消を求める訴は不適法である。
事件番号: 昭和49(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和51年11月30日 / 結論: 棄却
国税通則法七〇条二項四号によつて更正をする場合、その更正の対象となるのは、「偽りその他不正の行為」によつてその全部又は一部の税額を免れた当該国税の全体であり、右「偽りその他不正の行為」によつて免れた税額部分に限られるものではない。
事件番号: 平成31(行ヒ)61 / 裁判年月日: 令和2年7月2日 / 結論: 破棄自判
法人が受領した制限超過利息等を益金の額に算入して法人税の申告をし,その後の事業年度に当該制限超過利息等についての不当利得返還請求権に係る破産債権が破産手続により確定した場合において,当該制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算をすることは,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従ったものとは…