市が町会に対して地蔵像の建立あるいは移設のため市有地の無償使用を承認するなどした行為は、右承認等の意図、目的が市営住宅建替事業の円滑な進行を図る等の何ら宗教的意義を帯びないものであって、右地蔵像の帯有する宗教性が希薄なものとなっており、また、町会が宗教的活動を目的とする団体でなく、右地蔵像の維持運営に関する行為も伝統的習俗的行事にとどまっているなど判示の事情の下では、憲法二〇条三項、八九条に違反しない。
市が町会に対して地蔵像の建立あるいは移設のため市有地の無償使用を承認するなどした行為が憲法二〇条三項、八九条に違反しないとされた事例
憲法20条3項,憲法89条,地方自治法242条の2第1項3号
判旨
大阪市が町会に対し、市有地を地蔵像の建立等のために無償使用させた行為は、その目的が事業の円滑な進行や住民融和にあり、地蔵像の宗教性も希薄化していることから、信教の自由の確保との関係で相当とされる限度を超えず、憲法20条3項及び89条に違反しない。
問題の所在(論点)
地方自治体が地縁団体に対し、宗教的施設(地蔵像)の設置場所として市有地を無償提供する行為が、憲法20条3項の禁止する「宗教的活動」や、憲法89条の禁止する「宗教上の組織もしくは団体」に対する公の財産の利用提供に該当し、違憲とならないか。
規範
国家と宗教の関わり合いが、憲法が禁止する宗教的活動(20条3項)や公金の支出等(89条)に該当するか否かは、当該行為の目的及び効果にかんがみ、その関わり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、信教の自由の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものか否かによって判断すべきである(目的効果基準)。
重要事実
大阪市は、市営住宅の建替事業を行うに際し、地元の協力と理解を得て事業を円滑に進め、地域住民の融和を促進するため、各町会に対し、地蔵像の建立あるいは移設を目的とした市有地の無償使用を承認した。当該地蔵像は寺院外に存するもので、長年伝承される中で儀礼行事が習俗化しており、また使用主体である町会は宗教団体ではなく地域住民による地縁団体であった。
事件番号: 昭和62(行ツ)148 / 裁判年月日: 平成5年2月16日 / 結論: 棄却
一 市が忠魂碑の存する公有地の代替地を買い受けて右忠魂碑の移設、再建をした行為及び右忠魂碑を維持管理する地元の戦没者遺族会に対しその敷地として右代替地を無償貸与した行為は、右忠魂碑が、元来、戦没者記念碑的性格のものであり、特定の宗教とのかかわりが少なくとも戦後においては希薄であること、右戦没者遺族会が宗教的活動をするこ…
あてはめ
まず、本件行為の目的は、市営住宅建替事業の円滑な進行や住民融和の促進にあり、宗教的意義を帯びない。次に、効果について検討すると、本件地蔵像への信仰は民間信仰が変質・習俗化したものであり、その宗教性は希薄となっている。また、町会は宗教活動を目的としない組織であり、その維持運営も伝統的習俗的行事の範囲にとどまっている。したがって、市有地の無償使用承認という関わり合いは、社会的・文化的に見て相当な限度を超えていないといえる。
結論
本件行為は、憲法20条3項及び89条の規定に違反しない。
実務上の射程
津地鎮祭訴訟で示された「目的効果基準」を、地蔵像の無償私用という具体的な公有財産管理の場面に適用した事例である。宗教的施設であっても、それが民間信仰や習俗として定着し宗教性が希薄化している場合や、行政上の目的(事業推進)が主である場合には合憲とされる可能性が高いことを示しており、空知太神社事件等の後の判例との比較検討において重要な射程を有する。
事件番号: 昭和46(行ツ)69 / 裁判年月日: 昭和52年7月13日 / 結論: 破棄自判
一、憲法の政教分離原則は、国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いがわが国の社会的・文化的諸条件に照らし信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当と…