一 市が忠魂碑の存する公有地の代替地を買い受けて右忠魂碑の移設、再建をした行為及び右忠魂碑を維持管理する地元の戦没者遺族会に対しその敷地として右代替地を無償貸与した行為は、右忠魂碑が、元来、戦没者記念碑的性格のものであり、特定の宗教とのかかわりが少なくとも戦後においては希薄であること、右戦没者遺族会が宗教的活動をすることを本来の目的とする団体ではないこと、市が右移設、再建等を行つた目的が、右忠魂碑の存する公有地を学校用地として利用することを主眼とするもので、専ら世俗的なものであることなど判示の事情の下においては、いずれも憲法二〇条三項により禁止される宗教的活動には当たらない。 二 財団法人D会及びその支部は、憲法二〇条一項後段にいう「宗教団体」、憲法八九条にいう「宗教上の組織若しくは団体」に該当しない。 三 市の教育長が地元の戦没者遺族会が忠魂碑前で神式又は仏式で挙行した各慰霊祭に参列した行為は、右忠魂碑が、元来、戦没者記念碑的性格のものであること、右戦没者遺族会が宗教的活動をすることを本来の目的とする団体ではないこと、右参列の目的が戦没者遺族に対する社会的儀礼を尽くすという専ら世俗的なものであることなど判示の事情の下においては、憲法上の政教分離原則及び憲法二〇条、八九条に違反しない。 四 普通地方公共団体の長は、その権限に属する財務会計上の行為をあらかじめ特定の吏員に委任している場合であつても、右委任により処理された財務会計上の行為の適否が問題とされている代位請求住民訴訟において、地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当する。 五 普通地方公共団体の長の権限に属する財務会計上の行為を、委任を受けた吏員が処理した場合は、長は、右吏員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右吏員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかつたときに限り、普通地方公共団体が被つた損害につき賠償責任を負う。 (一、三につき補足意見がある。)
一 市が忠魂碑の存する公有地の代替地を買い受けて右忠魂碑の移設・再建をした行為及び右忠魂碑を維持管理する地元の戦没者遺族会に対しその敷地として右代替地を無償貸与した行為が憲法二〇条三項により禁止される宗教的活動には当たらないとされた事例 二 財団法人D会及びその支部と憲法二〇条一項後段にいう「宗教団体」及び憲法八九条にいう「宗教上の組織若しくは団体」 三 市の教育長が地元の戦没者遺族会が忠魂碑前で神式又は仏式で挙行した各慰霊祭に参列した行為が憲法上の政教分離原則及び憲法二〇条、八九条に違反しないとされた事例 四 自己の権限に属する財務会計上の行為を吏員に委任した普通地方公共団体の長と地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」 五 自己の権限に属する財務会計上の行為を吏員に委任した普通地方公共団体の長の損害賠償責任
憲法20条,憲法89条,地方自治法153条1項,地方自治法242条の2第1項4号
判旨
市による忠魂碑の移設・再建、敷地の無償貸与、および市長らの慰霊祭参列は、その目的が世俗的であり、特定の宗教への援助・圧迫等の効果も認められないため、憲法20条3項の禁止する宗教的活動には当たらない。
問題の所在(論点)
1. 市による忠魂碑の移設・再建、敷地の無償貸与が、憲法20条3項の宗教的活動、および憲法89条の公金支出制限に違反するか。 2. 市長らの慰霊祭への参列が、憲法20条3項に違反するか。
規範
憲法20条3項にいう「宗教的活動」とは、国と宗教との関わり合いが、我が国の社会的・文化的諸条件に照らし、相当とされる限度を超えるものに限られる。その該当性は、当該行為の主宰者、順序作法等の外形的側面のみならず、場所、一般人の宗教的評価、行為者の意図・目的、一般人に与える効果・影響等を諸般の事情を考慮し、社会通念に従って客観的に判断すべきである(目的効果基準)。また、憲法89条等の「宗教団体」とは、特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織を指す。
重要事実
箕面市は、小学校の校舎増築のため、隣接する市有地にあった忠魂碑を移設する必要が生じた。市は代替地(本件敷地)を買い受け、移設・再建工事費を支出し、市遺族会に対し本件敷地を無償貸与した。その後、市遺族会が主催する神式・仏式の慰霊祭に、市長や教育長らが公職者としての社会的儀礼の範囲で参列し、玉串奉奠や焼香を行った。市遺族会は戦没者遺族の相互扶助や顕彰を目的とする団体であった。
あてはめ
1. 移設・再建および貸与行為について。忠魂碑は戦後、宗教的性格が希薄な戦没者記念碑的性格を有しており、市の行為は小学校の用地確保という「専ら世俗的」な目的に基づく。また、従来から公有地に存した施設の代替地提供にすぎず、特定の宗教を援助・助長する「効果」も認められない。市遺族会も英霊顕彰を目的とするが、特定の宗教の普及を本来の目的とする「宗教団体」には当たらない。 2. 慰霊祭への参列について。主宰者は宗教団体ではなく遺族会であり、参列の「目的」は地元公職者としての社会的儀礼(弔意の表明)という世俗的なものである。玉串奉奠等の作法を伴うが、一般人の評価に照らし、特定の宗教を援助・促進する「効果」があるとは認められない。
結論
いずれの行為も、憲法20条3項および89条に違反しない。
実務上の射程
津地鎮祭訴訟の目的効果基準を、施設(忠魂碑)の維持・提供および行事への参列という場面に適用した射程を示す。宗教的色彩のある施設であっても、行政上の世俗的な必要性(公共事業等)に基づく代替措置であれば合憲とされやすいことを示唆する。また、市長が財務会計上の権限を委任していても、住民訴訟法上の「当該職員」に該当し得る点も実務上重要である。
事件番号: 昭和46(行ツ)69 / 裁判年月日: 昭和52年7月13日 / 結論: 破棄自判
一、憲法の政教分離原則は、国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが、国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、宗教とのかかわり合いをもたらす行為目的及び効果にかんがみ、そのかかわり合いがわが国の社会的・文化的諸条件に照らし信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当と…
事件番号: 令和1(行ツ)222 / 裁判年月日: 令和3年2月24日 / 結論: その他
市長が市の管理する都市公園内の国公有地上に孔子等を祀った施設を所有する一般社団法人に対して上記施設の敷地の使用料の全額を免除した行為は,次の(1)~(5)など判示の事情の下では,上記施設の観光資源等としての意義や歴史的価値を考慮しても,一般人の目から見て,市が上記法人の上記施設における活動に係る特定の宗教に対して特別の…