原子炉設置の許可の段階の安全審査においては、当該原子炉施設の基本設計の安全生にかかわる事項のみをその対象とするものと解すべきである。
原子炉設置許可の段階における安全審査の対象
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前のもの)23条,核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前のもの)24条
判旨
原子炉設置許可の段階における安全審査は、当該原子炉の基本設計の安全性のみを対象とする。また、行政手続における告知・聴聞等の機会付与は常に必須ではなく、高度な専門技術的判断を要する本件では周辺住民への告知等がなくても憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 原子炉設置許可手続において、周辺住民に対する告知・聴聞等の機会を設けていないことが憲法31条に違反するか。 2. 設置許可段階における安全審査の対象範囲はどこまでか(詳細設計等を含むか)。
規範
1. 行政手続に憲法31条の保障が及ぶ場合であっても、行政処分の性質や行政目的に応じ、常に告知、弁解、防御の機会を与える等の手続を設けることを必要とするものではない。 2. 原子炉設置許可の段階においては、規制法の段階的規制の構造に照らし、後続の設計・工事方法認可等の段階で審査される詳細設計等は含まず、専ら当該原子炉の「基本設計」の安全性にかかわる事項のみが審査の対象となる。
重要事実
上告人らが、原子炉設置許可処分の基準(規制法24条1項4号)が不明確であること、周辺住民に対する告知や聴聞の手続を欠くこと、および廃棄物処分等の細目的事項が安全審査の対象とされていないことが憲法31条等に違反するとして、処分の違法を争った事案。
事件番号: 昭和60(行ツ)133 / 裁判年月日: 平成4年10月29日 / 結論: 棄却
一 原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであつて、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議…
あてはめ
1. 原子炉設置許可の適否は高度な専門技術的判断を伴う。規制法24条2項が専門家集団である原子力委員会の意見聴取という慎重な手続を定めていることに鑑みれば、住民への直接の告知・聴聞を欠いても憲法31条の法意に反しない。 2. 規制法は製錬、加工、設置・運転等を章別に分け、さらに設置許可、設計・工事方法認可、使用前検査と段階的な規制を定めている。この構造から、設置許可段階では基本設計の安全性のみを審査すれば足り、詳細設計や廃棄物処分の具体的細目等は後続の各段階で規制・確保されることが予定されている。したがって、これらを許可段階の審査対象外としても適法である。
結論
原子炉設置許可処分は適法である。告知・聴聞の欠如および基本設計に限定した審査範囲のいずれも憲法・法令に違反しない。
実務上の射程
行政手続と憲法31条の関係、および「段階的規制」が採られている法体系における各処分段階の審査対象の画定手法を示す。伊方原発訴訟(最判平4.7.1)の理を再確認したものであり、大規模施設設置の行政過程における審査範囲を論ずる際の主要な規範となる。
事件番号: 平成15(行ヒ)108 / 裁判年月日: 平成17年5月30日 / 結論: 破棄自判
1 どのような事項が原子炉設置許可の段階における安全審査の対象となるべき当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項に該当するのかという点は,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律24条1項3号(技術的能力に係る部分に限る。)及び4号所定の基準の適合性に関する判断を構成するものとして,原子力安全委員会の科…
事件番号: 平成1(行ツ)130 / 裁判年月日: 平成4年9月22日 / 結論: 破棄自判
一 設置許可申請に係る原子炉の周辺に居住し、原子炉事故等がもたらす災害により生命、身体等に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民は、原子炉設置許可処分の無効確認を求めるにつき、行政事件訴訟法三六条にいう「法律上の利益を有する者」に該当する。 二 設置許可申請に係る電気出力二八万キロワットの原子炉(高速増…
事件番号: 平成1(行ツ)131 / 裁判年月日: 平成4年9月22日 / 結論: 棄却
一 行政事件訴訟法三六条にいう「その効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」とは、当該処分に基づいて生ずる法律関係に関し、処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟によっては、その処分のため被っている不利益を排除することができない場合はもとより、当該処分に起因する紛争を解決…
事件番号: 平成9(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成14年1月22日 / 結論: その他
建築基準法(平成4年法律第82号による改正前のもの)59条の2第1項に基づくいわゆる総合設計許可に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,同許可の取消訴訟の原告適格を有する。