一 設置許可申請に係る原子炉の周辺に居住し、原子炉事故等がもたらす災害により生命、身体等に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民は、原子炉設置許可処分の無効確認を求めるにつき、行政事件訴訟法三六条にいう「法律上の利益を有する者」に該当する。 二 設置許可申請に係る電気出力二八万キロワットの原子炉(高速増殖炉)から約二九キロメートルないし約五八キロメートルの範囲内の地域に居住している住民は、右原子炉の設置許可処分の無効確認を求めるにつき、行政事件訴訟法三六条にいう「法律上の利益を有する者」に該当する。
一 設置許可申請に係る原子炉の周辺に居住する住民と原子炉設置許可処分の無効確認を求めるにつき行政事件訴訟法三六条にいう「法律上の利益を有する者」 二 設置許可申請に係る原子炉(高速増殖炉)から約二九キロメートルないし約五八キロメートルの範囲内の地域に居住している住民が右原子炉の設置許可処分の無効確認を求めるにつき行政事件訴訟法三六条にいう「法律上の利益を有する者」に該当するとされた事例
行政事件訴訟法9条,行政事件訴訟法36条,核原料物質核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律23条,核原料物質核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律24条
判旨
原子炉設置許可処分の無効確認訴訟において、事故により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民は、行政事件訴訟法36条の「法律上の利益を有する者」に当たる。また、設置者に対する民事訴訟(差止請求等)が可能であっても、直ちに補充性の要件(同条後段)に欠けることにはならない。
問題の所在(論点)
1. 原子炉設置許可処分の無効確認訴訟において、周辺住民に原告適格(行訴法36条の「法律上の利益を有する者」)が認められるか。 2. 事業団に対する民事訴訟(差止請求)を提起できる場合、無効確認訴訟の補充性(行訴法36条後段)の要件を欠くことになるか。
規範
1. 行訴法36条の「法律上の利益を有する者」は、取消訴訟の原告適格(同法9条)と同義である。当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益を一般的公益に解消せず、個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含む場合、その利益を侵害されるおそれのある者は原告適格を有する。 2. 保護の趣旨の有無は、法規の趣旨・目的、保護しようとする利益の内容・性質を考慮して判断する。 3. 無効確認訴訟の補充性(36条後段)については、処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない場合に認められるが、民事訴訟が常に直截的かつ適切な解決手段であるとは限らない。
事件番号: 平成1(行ツ)131 / 裁判年月日: 平成4年9月22日 / 結論: 棄却
一 行政事件訴訟法三六条にいう「その効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない」とは、当該処分に基づいて生ずる法律関係に関し、処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟によっては、その処分のため被っている不利益を排除することができない場合はもとより、当該処分に起因する紛争を解決…
重要事実
被上告人(国)が動力炉・核燃料開発事業団に対し、高速増殖炉「もんじゅ」の設置許可処分を行った。これに対し、周辺住民である上告人らが当該処分の無効確認を求めて提訴した。上告人らは原子炉から約29kmないし58kmの範囲内に居住しており、一方で別途、事業団に対する民事の差止訴訟も提起していた。
あてはめ
1. 規制法24条1項3号・4号は、原子炉の安全性や技術的能力を審査基準としており、その趣旨は深刻な災害の防止にある。事故発生時には近隣住民ほど直接的・重大な被害を受ける性質に鑑みれば、同規定は一般的公益のみならず、被害が想定される範囲の住民の生命・身体の安全を「個別的利益」として保護する趣旨を含む。本件の「もんじゅ」は毒性の強いプルトニウムを使用する等の特質があり、29kmから58km離れた上告人らも、事故により直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲に居住しているといえる。 2. 事業団に対する差止訴訟は、処分の効力を前提とする「現在の法律関係に関する訴え」ではなく、無効確認訴訟と比較して直截的・適切な解決手段ともいえない。したがって補充性の要件も満たす。
結論
上告人らは行政事件訴訟法36条所定の原告適格を有し、かつ補充性の要件も満たすため、本件訴えは適法である。
実務上の射程
原子炉設置許可の原告適格について「被害が想定される範囲」という距離的・実質的な基準を示した。また、無効確認訴訟の補充性について、民事訴訟との優劣関係を柔軟に解釈し、行政訴訟による救済の道を広げた点に実務上の意義がある。
事件番号: 平成15(行ヒ)108 / 裁判年月日: 平成17年5月30日 / 結論: 破棄自判
1 どのような事項が原子炉設置許可の段階における安全審査の対象となるべき当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項に該当するのかという点は,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律24条1項3号(技術的能力に係る部分に限る。)及び4号所定の基準の適合性に関する判断を構成するものとして,原子力安全委員会の科…
事件番号: 平成2(行ツ)147 / 裁判年月日: 平成4年10月29日 / 結論: 棄却
原子炉設置の許可の段階の安全審査においては、当該原子炉施設の基本設計の安全生にかかわる事項のみをその対象とするものと解すべきである。
事件番号: 平成24(行ヒ)267 / 裁判年月日: 平成26年7月29日 / 結論: その他
1 産業廃棄物の最終処分場の周辺に居住する住民のうち,当該最終処分場から有害な物質が排出された場合にこれに起因する大気や土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,当該最終処分場を事業の用に供する施設としてされた産業廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物処分業の許可…
事件番号: 平成9(行ツ)7 / 裁判年月日: 平成14年1月22日 / 結論: その他
建築基準法(平成4年法律第82号による改正前のもの)59条の2第1項に基づくいわゆる総合設計許可に係る建築物の倒壊,炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は,同許可の取消訴訟の原告適格を有する。