一 原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであつて、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。 二 原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟においては、右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものであるが、被告行政庁の側において、まず、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議において用いられた具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認される。 三 原子炉設置の許可の段階の安全審査においては、当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項のみをその対象とするものと解すべきである。
一 原子炉設置許可処分の取消訴訟における審理・判断の方法 二 原子炉設置許可処分の取消訴訟における主張・立証 三 原子炉設置許可の段階における安全審査の対象
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前のもの)23条,核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律第80号による改正前のもの)24条,行政事件訴訟法30条,民訴法185条
判旨
原子炉設置許可処分の適法性審査において、裁判所は専門技術的知見に基づく行政庁の判断に不合理な点があるか否かを審査すべきであり、行政庁は自己の判断に不合理な点がないことを相当の根拠に基づき主張・立証する責任を負う。
問題の所在(論点)
1. 原子炉設置許可処分における専門技術的判断の司法審査の在り方(裁量審査の枠組み)。 2. 取消訴訟における事実上の主張・立証責任の分配。 3. 原子炉設置許可段階における安全審査の対象範囲。
規範
事件番号: 平成2(行ツ)147 / 裁判年月日: 平成4年10月29日 / 結論: 棄却
原子炉設置の許可の段階の安全審査においては、当該原子炉施設の基本設計の安全生にかかわる事項のみをその対象とするものと解すべきである。
1. 審理の範囲:原子炉設置許可の基準適合性審査は高度な専門技術的判断を伴うため、裁判所の審理は、行政庁(原子力委員会等)の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきである。 2. 違法の判断基準:(1)具体的審査基準に不合理な点がある場合、または(2)調査審議・判断の過程に看過し難い過誤・欠落があり、行政庁の判断がこれに依拠した場合には、当該処分は違法となる。 3. 主張・立証責任:行政庁が保持する資料の偏在性に鑑み、まず被告行政庁側が、判断に不合理な点がないことを相当の根拠・資料に基づき主張・立証する必要がある。これが尽くされない場合、不合理な点があることが事実上推認される。
重要事実
上告人(住民)らは、伊方原子力発電所の原子炉設置許可処分(規制法23条1項)につき、設置基準の不明確さや手続的瑕疵(周辺住民の不参加、告知・聴聞の欠如)、および安全審査の不備を理由として処分の取消しを求めた。原審は、安全審査の対象は基本設計に限られるとしつつ、行政庁の判断に不合理はないとして請求を棄却したため、上告に至った。
あてはめ
1. 審査対象の限定:規制法が段階的規制を採用していることから、設置許可段階では「基本設計」の安全性のみが審査対象であり、詳細設計や温排水の影響等は対象外である(判断:正当)。 2. 司法審査の密度:原子力委員会の科学的知見を尊重する法趣旨に鑑み、裁判所は「不合理性の有無」を審査するにとどめる。本件では、具体的審査基準や調査審議過程に看過し難い過誤等は認められず、行政庁の判断は不合理ではない。 3. 手続面:行政手続には常に告知・聴聞が必須ではなく、専門家の意見聴取という慎重な手続が定められている以上、憲法31条違反等には当たらない。
結論
本件原子炉設置許可処分における行政庁の判断に不合理な点は認められず、処分は適法である。上告棄却。
実務上の射程
専門技術的裁量が認められる分野(公害・環境法等)における司法審査の標準的枠組み(判断過程審査)として機能する。特に、行政側に実質的な主張・立証責任を負担させる法理は、情報偏在がある行政訴訟全般において極めて重要である。
事件番号: 平成15(行ヒ)108 / 裁判年月日: 平成17年5月30日 / 結論: 破棄自判
1 どのような事項が原子炉設置許可の段階における安全審査の対象となるべき当該原子炉施設の基本設計の安全性にかかわる事項に該当するのかという点は,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律24条1項3号(技術的能力に係る部分に限る。)及び4号所定の基準の適合性に関する判断を構成するものとして,原子力安全委員会の科…
事件番号: 平成24(行ヒ)267 / 裁判年月日: 平成26年7月29日 / 結論: その他
1 産業廃棄物の最終処分場の周辺に居住する住民のうち,当該最終処分場から有害な物質が排出された場合にこれに起因する大気や土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は,当該最終処分場を事業の用に供する施設としてされた産業廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物処分業の許可…