タクシー会社におけるストライキに際し、労働組合員が、車庫に格納された営業用自動車の傍らに座り込むなどして、会社の退去要求に応ぜず、会社は右自動車を車庫から搬出することができなかったなど判示の事実関係の下においては、労働組合員の右行為は、争議行為として正当な範囲にとどまるものとはいえない。
タクシー会社におけるストライキに際し労働組合員が行った営業用自動車の運行阻止の行為が正当な争議行為に当たらないとされた事例
労働組合法7条
判旨
ストライキの正当性は労務不提供にあり、使用者側の自由意思の抑圧や財産支配の阻止は許されないため、実力で車両を排他的占有下に置く運行阻止行為は、タクシー事業であっても正当な争議行為とはいえない。
問題の所在(論点)
労働組合法8条に基づき民事免責が認められる「正当な争議行為」の範囲。特に、タクシー等の運行阻止を目的とした車両の占拠・排他的占有が許容されるか。
規範
ストライキの本質は、団結して労働力を利用させない労務不提供(債務不履行)にある。したがって、不法に使用者側の自由意思を抑圧し、または財産に対する支配を阻止する行為は許されない。使用者はストライキ中も操業を継続する対抗措置を講じ得るため、組合員が説得活動の範囲を超えて車両等を排他的占有下に置くなどの実力行使による運行阻止行為は、正当な争議行為の範囲を逸脱し、違法である。
重要事実
タクシー会社Xの組合員Yらは、賃上げ等を求めて48時間のストライキを実施した。その際、YらはXの管理する2箇所の車庫において、組合員が乗務予定であったタクシー6台の傍らに座り込みや寝そべりを行い、車庫を占拠した。Xの専務らが車両の搬出と退去を数回求めたが、Yらはこれに応じず、2日間にわたり当該車両の稼働を不可能にした。なお、Yらに暴力や破壊行為はなく、管理者らの出入り自体は妨げていなかった。
あてはめ
Yらの行為は、単なる労務の不提供にとどまらず、Xの管理下にある車両の傍らを占拠し、数回にわたる退去・搬出要求を無視したものである。これは、対象車両を組合側の排他的占有下に置き、Xによる財産支配および操業継続の自由を実力で阻止したものといえる。目的の正当性や、暴力・破壊行為の欠如、対象車両の限定といった事情を考慮しても、使用者の自由意思を抑圧し財産支配を阻害する態様は、説得活動の範囲を逸脱しており、正当な争議行為とは認められない。
結論
本件運行阻止行為は正当な争議行為に該当せず、違法である。よって、Yらは不法行為による損害賠償責任を免れない。
実務上の射程
ピケッティングや職場占拠の限界を画する重要判例である。タクシー事業のような代替操業が容易な業種であっても、実力による「排他的占有」に至る行為は一律に正当性を否定される。答案上は、争議行為の態様の正当性を検討する際、単なる「場所的占拠」か、使用者の「財産支配の阻止」に至っているかを区別する基準として活用すべきである。
事件番号: 昭和49(オ)374 / 裁判年月日: 昭和49年10月22日 / 結論: 棄却
自動車修理業者甲の雇用する修理工見習乙が甲方工場敷地に置いてあつた専属的下請業者丙所有の車両を運転して事故を起こした場合に、乙が職務に関して自動車を運転したことはなく、丙が加害車を甲の業務のために使用させたことはなかつたなど判示の事情があるときは、甲は民法七一五条による責任を負わない。
事件番号: 昭和52(あ)469 / 裁判年月日: 昭和53年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】使用者はストライキ期間中も操業を継続する自由を有し、そのための対抗措置は威力業務妨害罪による保護対象となる。一方、争議行為としての操業阻止行為は、その動機・態様・周囲の状況等を総合考慮し、法秩序全体の見地から許容される範囲を超えれば、刑法上の違法性を阻却されない。 第1 事案の概要:旅客運送会社A…