刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条によれば、傷害罪の罰金の多額は二万五千円であるから、原判決が罰金三万円を言渡したのは、刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条の適用を誤り、法定刑を超える罰金刑を言渡した違法があるものといわなければならない。そして原判決は明らかに被告人のため不利益であるから、刑訴四五八条一項但書により、原判決を破棄して、被告事件につき更に判決をなすべきものである。
法令の適用を誤り被告人のため不利益な判決がなされた場合と非常上告
刑訴法458条
判旨
裁判所が宣告する刑は法律に定められた刑の範囲内(法定刑)でなければならず、罰金刑を選択した場合にその多額を超える金額を科した判決は、法令適用の誤りとして破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
裁判所が法律に定められた上限額(法定刑の多額)を超える罰金を言い渡した場合に、いかなる措置がとられるべきか。
規範
被告人の犯した各罪につき、科すべき刑の種類及び範囲は、刑法各条の規定並びに罰金等臨時措置法等の特別法により画定される。裁判所が科す刑は、これらにより定められた法定刑の範囲を逸脱してはならない。
重要事実
被告人は、窃盗罪、住居侵入罪、および傷害罪の犯行に及んだ。原判決は、住居侵入罪と傷害罪を牽連犯(刑法54条1項後段)とし、重い傷害罪の刑により罰金刑を選択した。当時の刑法204条及び罰金等臨時措置法3条によれば、傷害罪の罰金の多額(上限)は2万5000円であったが、原判決は被告人に対し罰金3万円を言い渡した。これに対し、検事総長が法令適用の誤りを理由として非常上告を申し立てた。
事件番号: 昭和28(さ)3 / 裁判年月日: 昭和28年8月27日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】刑法130条前段の住居侵入罪に処する場合、当時の罰金等臨時措置法に基づき算出される罰金の法定限度額を超えて刑を科すことは、法令に違反し許されない。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀の上、工場の塀を乗り越えて工場敷地内に無断侵入した。第一審判決に対し、原審(控訴審)は科刑が軽すぎるとして自ら判…
あてはめ
本件における傷害罪の罰金上限は、当時の罰金等臨時措置法3条の適用により2万5000円と解される。しかし、原判決はこれを超過する3万円の罰金を言い渡しており、刑法204条及び罰金等臨時措置法の適用を誤っている。法定刑を超えて刑を科すことは明らかに被告人にとって不利益な法令違反であり、刑事訴訟法458条1号但書に該当する。したがって、原判決のうち罰金刑に関する部分は法令の定めに違反し、被告人に不利益なものといわざるを得ない。
結論
原判決を破棄する。被告人を懲役6月及び罰金2万円(法定刑の範囲内)に処し、懲役刑については3年間の執行猶予を付す。
実務上の射程
罪数処理や刑の加減を経た後の「処断刑」の範囲を確定させ、その範囲内で刑を宣告すべきという、罪刑法定主義(刑罰権の司法的限界)を確認する事案。司法試験の答案上は、併合罪や牽連犯の処理において最終的な刑の範囲(多額・小額)を誤ることのないよう、計算過程の正確性が求められることを示す一例となる。
事件番号: 昭和32(さ)1 / 裁判年月日: 昭和32年3月26日 / 結論: 破棄自判
裁判所法三三条一項によれば簡易裁判所は窃盗及び傷害の罪について裁判権を有するが、同条二項によつて但書の場合を除いて禁錮以上の刑を科することができないことになつており、傷害罪につき懲役刑を選択し窃盗罪と併合加重をして懲役刑を言渡すことはできないことが明らかである。簡易裁判所がそのような処断を相当であると認めれば同条三項、…
事件番号: 昭和32(さ)4 / 裁判年月日: 昭和32年4月25日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】略式命令において、刑法130条及び罰金等臨時措置法所定の罰金刑の最高額を超える金額を科した判決は法令に違反する。そのため、非常上告に基づき原判決を破棄し、適正な法定刑の範囲内で自判すべきである。 第1 事案の概要:被告人は住居侵入の事実により略式命令を受け、罰金3,000円を科された。しかし、当時…
事件番号: 昭和23(そ)3 / 裁判年月日: 昭和24年2月1日 / 結論: 破棄自判
昭和二三年法律第二五一号罰金等臨時措置法施行(昭和二四年二月一日)前の刑法第一三〇条の罪に対し罰金五〇〇円の刑を言い渡した確定判決に対し非常上告があつたときは、旧刑訴第五二〇条第一号但書の場合に該当する。
事件番号: 昭和24(そ)5 / 裁判年月日: 昭和24年9月24日 / 結論: 破棄自判
裁判所法第三三條第二項によれば、簡易裁判所は刑法第二三五條の罪若しくはその未遂罪に係る事件又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法第五四條第一項の規定によりこれらの罪の刑を以て處斷すべき事件以外の事件については、禁錮以上の刑を科することができないことになつて居り、又同條第三項によれば若しその制限を超える刑を科するを相當と認め…