裁判所法第三三條第二項によれば、簡易裁判所は刑法第二三五條の罪若しくはその未遂罪に係る事件又はこれらの罪と他の罪とにつき刑法第五四條第一項の規定によりこれらの罪の刑を以て處斷すべき事件以外の事件については、禁錮以上の刑を科することができないことになつて居り、又同條第三項によれば若しその制限を超える刑を科するを相當と認めるときは事件を地方裁判所に移されなければならないことになつているのである。從つて原審が事案審理の結果若し住居侵入の點のみを有罪とする判決をなすを相當と思科するにおいては、本來罰金刑を言渡すか、然らずんば事件を地方裁判所に移すべきだつたのである。然るにかかる措置に出ることなく自から右裁判所法所定の制限を超えて懲役刑の言渡をなした原判決は明らかに同法第三三條第三項に違反するものであり、本件非常上告は理由がある。
簡易裁判所が裁判所法第三三條第三項の制限を超えて懲役刑を言渡した判決の違法
裁判所33條2項,裁判所33條3項,刑法235條,刑法第54條1項,舊刑訴法410條19號
判旨
簡易裁判所は、窃盗罪等を除き禁錮以上の刑を科すことができず、これを超える刑を科すのが相当な場合は地方裁判所に移送しなければならない。これに反して科された懲役刑の判決は、裁判所法33条に違反し、非常上告により破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
簡易裁判所が、住居侵入罪のみで有罪判決を下す際、裁判所法33条2項の制限を超えて禁錮以上の刑(懲役刑)を科すことの可否。
規範
裁判所法33条2項および3項によれば、簡易裁判所は原則として窃盗罪(刑法235条)等またはこれらと観念的競合(54条1項)の関係にある罪を除き、禁錮以上の刑を科することができない。また、これを超える刑を科すのが相当と認める場合には、事件を地方裁判所に移送しなければならない。
重要事実
事件番号: 昭和23(そ)3 / 裁判年月日: 昭和24年2月1日 / 結論: 破棄自判
昭和二三年法律第二五一号罰金等臨時措置法施行(昭和二四年二月一日)前の刑法第一三〇条の罪に対し罰金五〇〇円の刑を言い渡した確定判決に対し非常上告があつたときは、旧刑訴第五二〇条第一号但書の場合に該当する。
被告人は窃盗、同未遂、住居侵入の罪で簡易裁判所に公訴提起された。第1審(原審)は、窃盗および同未遂についてはいずれも証明がないとして無罪とする一方、住居侵入の点のみを有罪として、被告人を懲役6月(執行猶予2年)に処する判決を言い渡した。これに対し、検事総長が裁判所法33条の刑の制限に違反するとして非常上告を申し立てた。
あてはめ
本件において、原審は住居侵入罪のみを有罪とした。住居侵入罪は裁判所法33条2項が掲げる「窃盗罪等」には含まれない。したがって、同罪について禁錮以上の刑を科すことは同条項に抵触する。もし懲役刑を科すのが相当であると判断したのであれば、同条3項に従い事件を地方裁判所に移送すべきであったが、原審は移送せず自ら制限を超える懲役刑を言い渡した。これは明らかな法令違反である。
結論
原判決中、有罪部分は裁判所法の権限外の刑を科したものであり、被告人に不利益であるため、当該部分を破棄する。自判により、住居侵入罪に対し罰金250円を処する。
実務上の射程
簡易裁判所の事物管轄および刑罰権の限界を画する実務上の基本判例。起訴時に対象犯罪が含まれていても、実体審理の結果、対象外の罪のみが残る場合には、刑の種類の選択(罰金刑等)を行うか、さもなくば移送の措置を講じる必要があるという答案構成の指針となる。
事件番号: 昭和32(さ)1 / 裁判年月日: 昭和32年3月26日 / 結論: 破棄自判
裁判所法三三条一項によれば簡易裁判所は窃盗及び傷害の罪について裁判権を有するが、同条二項によつて但書の場合を除いて禁錮以上の刑を科することができないことになつており、傷害罪につき懲役刑を選択し窃盗罪と併合加重をして懲役刑を言渡すことはできないことが明らかである。簡易裁判所がそのような処断を相当であると認めれば同条三項、…
事件番号: 昭和24(れ)28 / 裁判年月日: 昭和24年5月31日 / 結論: 棄却
論旨は、原審は本件の併合罪につき法定の加重をするに當り、窃盜罪と強盜未遂罪との刑の輕重の比較において窃盜罪を重しとしてその刑に法定の加重をしているが、それは違法であるというのである。しかし、同時に刑を加重減輕すべきときには、併合罪の加重は、先だつて法律上の減輕をしなければならないことは、刑法第七二條の規定するところであ…
事件番号: 昭和29(さ)1 / 裁判年月日: 昭和29年4月13日 / 結論: 破棄自判
刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条によれば、傷害罪の罰金の多額は二万五千円であるから、原判決が罰金三万円を言渡したのは、刑法二〇四条、罰金等臨時措置法三条の適用を誤り、法定刑を超える罰金刑を言渡した違法があるものといわなければならない。そして原判決は明らかに被告人のため不利益であるから、刑訴四五八条一項但書により、原判…
事件番号: 昭和31(さ)1 / 裁判年月日: 昭和31年7月13日 / 結論: 破棄自判
原審釧路簡易裁判所は昭和二八年五月六日、被告人Aに対する窃盗傷害被告事件につき二個の窃盗の事実並びに二個の傷害の事実を認定して、これに対しそれぞれ相当法条適用の上傷害罪について刑法二〇四条所定刑中懲役刑を選択し、以上の各罪を併合罪として法定の加重をした刑期範囲内において同被告人を懲役一年六月に処し、五年間右刑の執行を猶…