判旨
憲法36条が禁ずる拷問の事実が認められない場合には、自白の任意性を欠くとの違憲主張はその前提を欠き、上告理由にならない。
問題の所在(論点)
憲法36条および38条に関わり、被告人が主張する拷問の事実が認められない場合に、自白の任意性に関する違憲主張が適法な上告理由となるか。
規範
拷問による自白排除の原則について、憲法38条2項および刑訴法319条1項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白、又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白はこれを証拠とすることができないと定めている。上告理由として拷問を主張する場合、客観的にその事実を認めるに足りる証跡が必要である。
重要事実
被告人らが拷問を受けたとして、自白の証拠能力や手続の違憲性を争い上告した事案。弁護人は、捜査段階において拷問が行われたことを前提とする違憲主張を行った。
あてはめ
記録を精査しても、所論のような拷問の事実を認めるべき証跡は存在しない。したがって、拷問があったことを前提とする違憲主張は、その前提を欠くものといわざるを得ない。その他の主張も、単なる訴訟法違反や事実誤認の主張にとどまり、刑訴法405条の上告理由には当たらない。
結論
本件各上告を棄却する。
実務上の射程
自白の任意性に関する違憲主張(刑訴法405条1号)を維持するためには、拷問等の具体的事実を裏付ける客観的証拠が必要であることを示している。司法試験においては、自白排除法則の適用局面において、具体的な強制・拷問の事実認定が規範適用の前提となることを確認する際に参照される。
事件番号: 昭和24(れ)2780 / 裁判年月日: 昭和27年3月7日 / 結論: 破棄差戻
検事に対する被告人の自白が、その一両日前警察署における刑事の取調の際に長時間に亘る肉体的苦痛を伴う訊問の結果した自白を反覆しているに過ぎないのではないかとの疑が記録上極めて濃厚であつて、かかる疑を打ち消すべき特段の事情を発見することができないにも拘らず、警察における前示肉体的苦痛と検事に対する右自白との間に因果関係がな…
事件番号: 昭和26(れ)588 / 裁判年月日: 昭和26年7月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】警察段階での自白が拷問によるものと疑われる場合であっても、それが証拠として引用されておらず、かつ他に拷問を裏付ける資料がない場合には、憲法38条違反の問題は生じない。また、原審で証人喚問の申請がなされていない以上、証人尋問の機会を奪ったとする違憲の主張は成立しない。 第1 事案の概要:被告人Aは警…
事件番号: 昭和26(あ)3297 / 裁判年月日: 昭和28年4月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、事実誤認の主張や逮捕時の警察官の行動に対する非難は、憲法違反をいうものであっても適法な上告理由には当たらないとしている。 第1 事案の概要:被告人が逮捕された際、警察官が何らかの行動をとったが、弁護人はその逮捕当時の警察官の行動を非難し、併せて憲法違反や事実誤認を主張して上告を申し立てた…