所論公訴事実と原審認定の事実とはその基本的事実関係において相違するところなく、単に欺罔方法の一部に差異あるに過ぎないのであるから、たとえ原審が訴因変更の手続を経ることなく、判示事実を認定したからとて、これによつて、実質的に被告人に不当な不意打を加えその防禦権の行使を妨げたものと認めることはできないのであつて原判決には所論の訴訟法違反もない。(昭和二六年(あ)一三〇三号同二八年三月五日当法廷決定、集七巻三号四四三頁以下参照)
詐欺罪について起訴事実と認定事実とが単に欺罔方法の一部につき差異あるに過ぎない場合と訴因変更の要否
刑法246条,刑訴法256条,刑訴法312条
判旨
訴因と認定事実の間に基本的事実関係の同一性が認められ、かつ被告人の防禦権行使に実質的な不利益を及ぼさない場合には、訴因変更の手続を経ることなく訴因と異なる事実を認定しても違法ではない。
問題の所在(論点)
裁判所が検察官による訴因変更の手続を経ることなく、訴因と異なる事実を認定することが許されるか(刑事訴訟法312条1項、256条3項の解釈)。
規範
裁判所が訴因変更の手続を経ずに、訴因と異なる事実を認定できるのは、(1)公訴事実(訴因)と認定事実とがその基本的事実関係において相違がないこと、および(2)それによって実質的に被告人に不当な不意打ちを加え、その防禦権の行使を妨げたものと認められない場合に限られる。
重要事実
被告人Bらによる詐欺被告事件において、原審は、検察官による訴因変更の手続を経ることなく、公訴事実に記載された欺罔方法とは一部異なる事実を認定した。これに対し、被告人側は、訴因変更手続を経ずに異なる事実を認定したことは訴訟法違反であるとして上告した。
事件番号: 昭和25(れ)2875 / 裁判年月日: 昭和25年12月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】連続一罪として起訴された数個の行為の一部について無罪と認める場合、主文において個別に無罪の言い渡しをする必要はない。 第1 事案の概要:被告人は、複数の行為からなる連続一罪として起訴された。裁判所は審理の結果、起訴された数個の行為のうち、その一部については犯罪の証明がないと判断したが、残部について…
あてはめ
本件において、公訴事実と原審が認定した事実は、その基本的事実関係において相違するところはなく、単に欺罔方法の一部に差異があるに過ぎない。したがって、たとえ訴因変更の手続を経ることなく判示事実を認定したとしても、これによって実質的に被告人に不当な不意打ちを加えたとはいえず、防禦権の行使を妨げたものとは認められない。
結論
原判決に訴訟法違反はなく、訴因変更なしでの事実認定は適法である。
実務上の射程
訴因変更の要否に関するリーディングケースの一つ。答案上では、事実の同一性(312条1項)という「枠」の問題と、被告人の不意打ち防止(防禦権の保障)という「手続」の問題の両面から検討する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)1822 / 裁判年月日: 昭和27年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法411条は上告裁判所が職権で原判決を破棄できる事由を定めた規定であり、当事者が主張すべき適法な上告理由を定めたものではない。したがって、同条に基づく主張は実質的に量刑不当等の非難にすぎない場合、刑訴法405条の上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cおよびそれぞれの弁護人…
事件番号: 昭和26(あ)952 / 裁判年月日: 昭和28年1月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白がある場合、相被告人の供述を当該被告人の自白に対する補強証拠とすることができる。これは憲法38条3項の趣旨に反するものではない。 第1 事案の概要:被告人の自白が存在する刑事事件において、原判決が相被告人の供述を被告人の自白に対する補強証拠として採用し、有罪判決を下した。これに対し弁護…
事件番号: 昭和25(あ)2628 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
かりに、起訴状謄本の送達が適式でなかつたとしても、本件においては、被告人が異議を述べていないのであつてかかる場合には刑訴四二条の問題とならない。
事件番号: 昭和26(れ)157 / 裁判年月日: 昭和26年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認または量刑不当の主張は、刑訴応急措置法13条2項に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書において、原判決における事実の認定に誤りがあること、および、宣告された刑の量定が不当に重いことを主張した。 第2…