判旨
公判調書に被告人が身体の拘束を受けなかった旨の記載がないことをもって、直ちに公判廷で身体の拘束を受けたと断定することはできない。また、自白の任意性については、記録上強制等の不任意な形跡が認められない限り、その訴えを採用することはできない。
問題の所在(論点)
1. 公判調書に「身体の拘束を受けなかった」旨の記載がない場合、公判廷において被告人の身体拘束が行われたとみなされるか(刑事訴訟法411条等の適用の有無)。2. 自白の任意性が争われる際、どの程度の形跡があれば不任意と認められるか。
規範
1. 公判手続において被告人が身体の拘束を受けたか否かは、公判調書の記載(必要的記載事項ではない)のみから形式的に判断されるものではなく、記録上の具体的な形跡に基づき判断されるべきである。2. 自白の証拠能力(任意性)については、強制、拷問、脅迫等による不任意なものと認めるべき具体的形跡がない限り、否定されない。
重要事実
被告人が公判廷において身体の拘束を受けた状態で審理が行われたと主張して上告した事案。公判調書には、被告人が身体の拘束を受けなかったという旨の記載が欠けていた。また、被告人は自らの自白が強制等による不任意なものであるとも主張したが、記録上それを裏付ける証拠や形跡は存在しなかった。
あてはめ
1. 身体拘束の有無について、公判調書に拘束を受けなかった旨の記載がないことは、直ちに拘束の事実を意味しない。これは公判調書の必要的記載事項ではなく、記録上も拘束を受けた形跡が全く認められないため、手続上の違法はない。2. 自白の任意性について、記録を精査しても強制、拷問、脅迫等による不任意なものと認めるべき形跡が全く存在しないため、被告人の主張には理由がない。
結論
被告人の上告は棄却される。公判調書の記載欠如のみをもって身体拘束の事実は認められず、自白の任意性も否定されない。
実務上の射程
公判調書の必要的記載事項(刑訴法48条、刑訴規則44条等)に含まれない事項については、記載の欠如から不適法を推認できないとする。また、自白の任意性争いにおいて、弁護側が不任意性を主張する際には、記録上何らかの具体的な形跡(証拠)が示されない限り、裁判所は任意性を否定しないという実務上の運用の基礎となる。
事件番号: 昭和26(あ)4253 / 裁判年月日: 昭和28年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の司法警察員または検察官に対する供述について、強制または不当抑留に基づく不任意の自白であると認められない場合には、自白の任意性を否定することはできない。 第1 事案の概要:被告人が司法警察員または検察官に対して行った供述(自白)について、弁護人が強制または不当抑留に基づく不任意の自白であると…