判旨
被告人が被害者の承諾を予見していたという事実が認められない場合には、被害者の承諾の有無にかかわらず、違法性を欠くと判断される余地はない。
問題の所在(論点)
被告人が被害者の承諾を予見(認識)していたか否かが不明確な場合において、客観的な承諾の有無やその予見を前提とした違法性阻却等の主張が認められるか、また原判決に判例違反等の上告理由が存在するか。
規範
被害者の承諾が犯罪の成否に影響を与える場合であっても、被告人がその承諾を予見(認識)していたと認められる事実関係が存在しない以上、違法性阻却や故意の阻却を論じる前提を欠く。また、裁判所は、認定した事実に基づき、被告人が主張する承諾の予見という主観的態様の有無を判断する。
重要事実
本件は、被告人の行為について被害者の承諾の有無やその予見が問題となった事案である。被告人側は、被害者の承諾を予見していた旨を主張し、原判決がその点について判例に違反する判断を示したと主張して上告した。しかし、原判決の認定によれば、被告人が被害者の承諾を予見していた事実は認められていなかった。
あてはめ
原判決は、被告人が所論のような承諾を予見したという判断をしていない。被告人側の主張は、原判決が認定していない「承諾を予見した」という別個の判断を勝手に想定し、それを前提として判例違反を主張するものである。したがって、認定された事実に基づかない主張は、刑事訴訟法405条3号の上告理由には当たらない。また、記録を精査しても事実誤認(刑訴法411条適用)は認められない。
結論
被告人が承諾を予見したという事実が認められない以上、判例違反や事実誤認の主張には理由がなく、上告は棄却される。
実務上の射程
被害者の承諾を論じる際、主観的態様(認識・予見)が認定されない限り、承諾による法理の適用は否定される。司法試験においては、客観的な承諾の有無だけでなく、行為者の認識(主観的正当化要素の要否)という文脈で、事実認定の重要性を示す材料として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)990 / 裁判年月日: 昭和28年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において、第一審判決の証拠以外に基づいた事実誤認の主張を排斥する際、理由の文言に不適切な点があっても、判決全体として記録に基づき事実誤認の有無を十分に審理判断しているならば、判決に影響を及ぼす瑕疵とはいえない。 第1 事案の概要:被告人が第一審の事実認定に誤りがあるとして控訴した事案において…